幣原喜重郎とその時代

幣原喜重郎とその時代

幣原喜重郎とその時代

幣原喜重郎とその時代 (PHP文庫)

幣原喜重郎とその時代 (PHP文庫)

近現代を知らない

学校で近代史をよくやらない、という批判がよくあります。
どういうわけだか進度を気にしない教師が確かにいて、私も中学時代の日本史は明治10年代までしか授業を受けられませんでした。
日本の教育は堅苦しいやり方をすることが多いのですけれども、こういう部分が妙に教員の裁量に任されていてルーズだったりします。
しかし、大学受験で日本史を選択した者にとっては近現代史は頻出分野なので、いい加減に取り組むということはありません。私も受験に際しては真面目に勉強しました。
が、近頃あらためて満州事変やら統帥権干犯問題やらが「どういう流れで何故起こったのか」を考えてみたときに、ほとんど全くわからない、ということに気づきました。
受験からだいぶ経ったし忘れてしまったのかな、とか勉強法が暗記中心で至らなかったのかな、などと思いました。

教科書ではわからない

そこで受験用の参考書や教科書をじっくりと読み返してみたのですが、びっくりしました。
受験生当時は日本史は試験対策に覚えればよいだけのものに過ぎず、自分が歴史を理解ししているかどうかを気にしていなかったのでわからなかったのですが、「教科書には肝心の説明が何もない」ということを発見したのです。
大学受験定番の教科書をよく読んでも、満州事変前後の物事の流れや原因がほとんどわかりません。
教科書はある事実が「起こった」ということは書いてありますし、周辺の事実やら一応の理由付けを書いてはあるのですが(例えば、『不況の打開のために大陸進出を企てた』とか通り一遍の)、「なぜそこまでの事態に至ったのか」までを得心できるほどの解説などありません。
ご丁寧なことに教科書の補助で使う分厚い解説本を読んでも書いていないのですから、学校の勉強をきちんと通過した我々が、近現代史への理解が薄いのも当然のことであります。

概観できる本を

私が特に知りたかったのは大正〜太平洋戦争に至る時期のことだったので、その時代を概観できるような易しめの本を探していたのですが、意外とないものです。
戦争関係の本はテーマごとに深くつっこんだものになりがちなので、ざっと流れを読めて、しかもひとつひとつの事件の背景に筋道をたてて言及しているものにはなかなか行き当たりませんでした。
その意味では、この「幣原喜重郎とその時代」という本はうってつけでした。
説明のレベルや文章が難しすぎず、私の知りたかった事情が網羅されており、非常に役立ちました。

東郷・重光とその時代

重光・東郷とその時代

重光・東郷とその時代

いよいよ太平洋戦争に至る時代については、こちらの本で扱っており、やはり理解の役に立ちました。ただ、この時代には既に戦争に突っ込むことがほとんど決定的になってしまっていたので、大日本帝国が破滅へと一歩一歩自ら進んでいく様子を溜息をつきながら読むという具合ではありました。こちらの本を読んでむしろ関心が高まったのは松岡洋右についてです。中公新書に松岡を扱った本があるらしいので、手にとってみようと思っています。