「クトゥルフの呼び声」 RPG


Call of Cthulhu (role-playing game) - Wikipedia
クトゥルフの呼び声」は、H.P.ラブクラフトの同名小説と、それにインスパイアされたいわゆるクトゥルフ神話に基づいたホラー・ロール・プレイングゲームである。しばしばCoCと略されるこのゲームはケイオシアム社から出版されている。

設定

「そは永久に横たわる死者にあらねど、測り知れざる永劫のもとに死を超ゆるもの(大瀧啓裕訳)」

クトゥルフの呼び声」の設定は、我々の世界をより陰鬱な姿にしたものであり、「人類が持つ最も古く強い感情は恐怖であり、最も強い恐怖とは未知なるものの恐怖である」という、H.P.ラブクラフトの所見に基づくものである。

オリジナルのゲーム(d20ではなく)では3つの主要な時代が扱われている。ラブクラフトの多くの小説の設定である1920年代、ホラーとシャーロック・ホームズ推理小説の要素を混ぜ、おおかたイギリスを舞台にした「ガス灯」サプリメントの1890年代、そして「クトゥルフ・ナウ」における現代の陰謀ものである。

最近の拡張セットでは、「クトゥルフ・ダークエイジズ(暗黒時代)」における紀元1000年、「クトゥルフライジング(甦るクトゥルフ)」の23世紀、「クトゥルフ・インヴィクトゥス(比類なきクトゥルフ)」のローマ時代が扱われている。

プレイヤーは、ドリームランドに代表されるような、地球ではない場所を訪れることもできる。

ゲームプレイ

プレイヤーは、謎めいた領域にひきよせられた普通の人々を演じる。探偵、犯罪者、学者、芸術家、帰還兵など、である。しばしば、事件は全くどうということなく始まり、やがて事件の背後で行われていることが次々と暴かれる。キャラクター達が、世界にある真の恐怖や人間とはかけはなれたものを知っていくにつれて、彼らは避けがたく正気を失っていく(ゲームには実際に、一定の局面でキャラクターの精神がどれほどのダメージを受けたかを判定するシステムがある)。おぞましいものに打ち勝つための魔術的な知識や魔法などの手段を入手するには、その利点と引き換えにキャラクター達はその正気度をいくらか捨てなくてはならない。

クトゥルフの呼び声」はプレイヤーのキャラクターが身の毛もよだつ状況で死んだり、精神病院で結末を迎えることが非常によくある、ということで有名である。

キャラクターに異状がない(少なくとも行動できる)限り、キャラを進歩させることができる。「クトゥルフの呼び声」はレベルシステムを採用しておらず、完全に技能に根ざしている。プレイヤーキャラクターは技能の使用に成功することによって、技能をより上手く使っていけるようになる。

ゲームの沿革

クトゥルフの呼び声」の起源はケイオシアム社から作成を委託された「ダーク・ワールド」であるが、出版されることはなかった。コンピュータゲームの「ドゥーム」によって今や名声を得ているサンディ・ピーターソンは、ラブクラフトの「ドリームランド」の設定で、人気のファンタジーゲームである「ルーン・クエスト」のサプリメントを執筆するという件で彼らに連絡をとった。ピーターソンは「クトゥルフの呼び声」の執筆を引き継ぎ、「ルーン・クエスト」で使われているロール・プレイングの基本システムの簡略版を用いて1981年に「クトゥルフの呼び声」を発売した。このゲームは翌年、3つの主要な賞を受賞した。

クトゥルフの呼び声」は今や6版目であるが、そのルールは長年にわたって、わずかに改変されてきた。2002年に「クトゥルフの呼び声:20周年記念版」はオリジン・アワードで、描写における最優秀賞を受賞している(Best Graphic Presentation of a Book Product 2001)

初期の作品

クトゥルフの呼び声」の根底がRPGの伝統にあることを考えれば、初期の多くの作品はやはり「ダンジョンズ&ドラゴンズ」の枠組みに基礎が置かれていた。それらの作品はキャラクター達が洞穴をさまよい、さまざまなタイプの恐ろしげな怪物たちと戦う、ということをしばしば伴うものであった。それにもかかわらず、現実的な設定、キャラクターの掘り下げ、困難にあたって活路を見出していくこと、に力点がおかれていたことが、多くのファンを獲得することにつながった。

クトゥルフの呼び声」の最初の作品は「ヨグ・ソトースの影」であった。この作品の中でキャラクター達は、秘密結社による人類滅亡の忌まわしい計画に偶然出くわし、最初は自宅の近辺で、そして海外においてその計画を追及する。物語のこのようなパターンは、「ユゴスの嫌悪すべきものども」(後に「クトゥルフの呪い」「獣の日(デイ・オブ・ザ・ビースト)」として知られる)や「アザソースの子」や、最も著名な「ナイアーラトテプの仮面(顔)」といった多くのキャンペーンでも踏襲された。これらの多くは、物語のスタイルがH.P.ラブクラフトよりもインディ・ジョーンズの俗っぽい冒険譚に近いようであるのだが、それでも多くのゲーマーに愛されているのである。

「ヨグ・ソトースの影」が重要なのは、「クトゥルフの呼び声」の初版に関しての最初の拡張セットであるからだけではなく、探偵を演じるプレイヤーが追跡する、現実に存在する手がかりや、進行中の卑劣な計画を暴くためのつながりを含んだ、関連付けのあるRPGシナリオのキャンペーンを行う新しい方法を定義づけたからである。「ヨグ・ソトースの影」の構成は、「クトゥルフの呼び声」の、他の全てのキャンペーンで使われている。

「てがかり」がどんなものであるかはシナリオによって様々であるが、「ナイアーラトテプの仮面」と「オリエント急行の恐怖」でそれは極致に達した。これらのシナリオの中には、切り取り式マッチ、NPCによって傷つけられて読めなくされた名刺、新聞の切り抜き、そして(オリエント急行の事件では)プレイヤーが写真を貼り付けられるパスポート、が入っており、テーブルトークRPGにライブ・アクション・ロール・プレイング(Live Action Role Playing)の感覚をもたらしている。実際、これらのサプリメントが作られた時期には、キャンペーンを出版するサードパーティが、キャンペーン向けの「デラックスてがかりセット」を別売りでしばしば発売して、拡張セットの品質をしのごうと競っていた。

プレイ環境の拡張は、ケイオシアム社から「ドリームランド」が発売されて行われた。これは「ドリームランド」のプレイに必要な追加ルール、大型の地図、シナリオ冊子、そして「ガス灯の傍らのクトゥルフ」という1920年代から1890年代を舞台にした別のボックスセットの入った箱入りサプリメントであった。

「現代のクトゥルフ」(クトゥルフ・ナウ)

1990年代の初め、ケイオシアム社は「現代のクトゥルフ」というサプリメントを刊行した。これは、ルール、追加の資料、「クトゥルフの呼び声」を現代の設定でプレイするシナリオ、の集成である。これはこれまでの代わりのプレイ環境として非常に人気を博し、この追加素材の多くは今では中心となるルールブックに採用されている。このサプリメントは絶版である。

ラブクラフトの土地」(ラブクラフト・カントリー)

ラブクラフトの土地」は1990年に発売された、「クトゥルフの呼び声」のサプリメントのシリーズである。これらのサプリメントはキース・ハーバーによって監修されたもので、ラブクラフトが架空したアーカム、キングスポート、インスマウス、ダンウィッチといった街やそれらの近郊に背景や冒険の設定をおいている。これらは、プレイヤーに共通の基盤を与えることだけではなく、はっきりした動機をもつ詳しく描写されたキャラクターに話の焦点をあてることが目的であった。ハーバーがケイオシアム社を去り、このラインナップは終了した。

神話体系

「神話体系」はクトゥルフ神話体系に基づいてケイオシアム社が1990年代の中盤に発売したカードゲームである。そのゲームプレイのテンポの良さや独特のシステムが概して賞賛された一方で、大きなセールスをあげることが結局はできなかった。結果的に生じたこの失敗がケイオシアム社に経営難をもたらし、「クトゥルフの呼び声」のための素材を作る能力に悪影響を与えたことによって、このカードゲームは批判を浴びている。「クトゥルフの呼び声」カードゲームの第2弾はファンタジーフライト・ゲームズ社によって作られている。

近年の状況

この8年間は、カードゲームの失敗のせいで、「クトゥルフの呼び声」シリーズの発売が、発売と発売の間が1年空いてしまうほどまばらであった。ケイオシアム社は経営が再び上向くまで長い間、破産寸前の状況で苦闘した。2005年は、10作品のゲームが発売され、近い将来にさらなる多くの発売予定がたったことで、この何年もの間で最良の年であった。

ケイオシアム社は最近、「モノグラフ」の販売をし始めた。これは作家がそれぞれに編集し、レイアウトをし、消費者に直接に提供する短い本である。長い眼でみた場合の、この企画の結果はまだはっきりしないが、見込みのある新しい作品への市場の反応を会社が計ることができるものではある。

クトゥルフ神話体系の恐怖に遭遇する時間と場所の幅は、2005年後期に出た拡張セット「クトゥルフ・ダーク・エイジズ」でさらに広がり、10世紀のヨーロッパの設定でプレイできるようになった。

認可業者

サプリメントの作成を許可された業者:省略

d20 「クトゥルフの呼び声

2001年、ウィザーズ・オブ・ザ・コースト社から、d20システム向けの独自の「クトゥルフの呼び声」が発売された。元のゲームの雰囲気を保ちつつ、より簡単にプレイするためのルール改定がなされている。d20システムは「ダンジョンズ&ドラゴンズ」にクトゥルフ神話体系を持ち込むことを可能にしただけでなく、「クトゥルフの呼び声」で「ダンジョンズ&ドラゴンズ」のキャラクターを使用できるようにもしている。このゲームへの評判は様々で、ある人たちは完全に拒絶しているし、別の人たちは(元のゲームを楽しんだ人々も含めて)d20版を愛好している。

d20版は現在、ウィザーズ社からもケイオシアム社からもサポートされていない。