財政安泰論に破綻の兆し


日本は現在、世界最大の金融緩和と、先進国中最大の財政支出を行っていますが、先進国で唯一、経済が停滞しています
アメリカ、イギリス、ユーロ圏のように経済の回復が順調な諸国の特徴は、金融緩和と緊縮財政を組み合わせていることです。
景気回復がうまくいっているので、アメリカは金融緩和をすでに止め、ユーロ圏も縮小しました。(イギリスは2012年に早くも停止していましたが、2016年のブレグジット決定後に再開)
安倍政権は「内需を拡大する」という意図で金融政策を抑え(円安にすると輸出がふえて輸入が減ってしまうという謬見)、財政政策を拡大しましたが、現実には日本の内需が衰えて輸入が減少し、緊縮財政と利上げをしている海外諸国が日本の製品を買ったことで、むしろ輸出が増えてしまいました。
世界の生産と雇用に貢献するという安倍政権の目論見は真逆の結果を招来して失敗しているのです。

政拡大→財政の悪化のみ招来

リフレ系論者は、「財政を拡大すると経済が拡大する。政府債務の比率が低下するので財政は安泰」と主張してきました。
しかし、2016年に観察されたのは、「財政拡大→経済停滞→赤字国債増発」という負の連鎖であり、3つの意味で財政が悪化しました。
リフレ系論者の主張は何一つ実現せず、空論であったことが現実の経済によって証明された年になりました。
彼らは、「金融緩和をしていれば財政政策は効く」と言っていますが、だれの目にも明らかなように、効いていません。
日本は現在、世界最大の金融緩和をしていますが、財政拡大によってむしろ景気が悪くなりました。
最近は「防衛費を増やすと景気が良くなる」とも述べるようになりましたが、これが本当ならソ連は経済大国になったことでしょう。
軍事力を拡大してもそれは経済生産には使えない資本なのですから、日本の経済成長に役立つはずがありません。
日本は在日米軍の経費をさらに受け持つか、カネだけでなく防衛上の危険を負担するかしなくてはならないでしょう。
予算だけ増やしても危険を負担しないなら自主防衛度を上げることにはなりません。
この辺の議論にも彼らの「金額先にありき」という、およそ経済学徒とは思えない発想があります。
防衛力を増強するのであれば、まず中身が重要なはず。
自衛隊に足りない装備、訓練は何かを具体的に突き止め、そこに必要な予算をつけるという順序であるべきです。
予算の拡大が先にあっても、それを何に使うかが未定の状態では、防衛力の増強にはなりません。
単に自衛官の給料を上げても、防衛官僚の天下り先に予算をつけても「防衛予算の拡大」になるのですから。