インフレ目標の先送りは当然の成り行き


なんの不思議もございません。

日銀:物価2%達成を「18年度ごろ」に先送り、金融政策は据え置き
2016年11月1日 12:12 JST 更新日時 2016年11月1日 17:59 JST
日本銀行は1日の金融政策決定会合で、長短金利操作付き量的・質的緩和の枠組みによる金融調節方針の維持を決定した。従来2017年度中としていた2%の物価目標の達成時期は「18年度ごろ」に先送りした。18年4月までの黒田東彦総裁の任期中の達成は難しい情勢となった。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-11-01/OFOWGW6TTDS401

今年の黒田総裁はとても正直で、本音を読み取ろうと思えば読み取れる方法でコミュニケーションしています。
インフレ目標が先送りになったのは、金利ターゲットが設定されたのだから当たり前です。金利が下げられなくなったというのは、マイナス金利が否定されただけでなく、緩和量の増大もできなくなったということであります。
長期金利は0くらい、できればプラスにしたいという思惑の中、どうして追加緩和ができましょうか。
為替レートもまったく無反応であり、マーケットもまた、今回の先送りを当たり前のこととして受け止めています。
インフレ目標の達成を促しながら金利ターゲットに賛成する人びとの方が異常なのであって、黒田総裁は至って普通のことを発言しています。
また、先送りが発表されたということは、日銀は表面上は政府の財政政策の効果を期待するようなことを言っていますが、本音では財政政策がインフレ率の上昇に効くと思っていないということであります。
効くと思っているのであれば、これから政府が財政を拡大するわけですから、インフレ目標の達成時期を早めたことでしょう。
実際問題、2015年補正予算、2016年の拡大された本予算、2016年の第一次補正予算が執行中のいま、インフレ率は0近傍で横ばいであります。
世界を見渡してみたとき、アメリカ・イギリス・ユーロ圏のインフレ率はそろってプラスであり、GDP成長率も日本より高めですが、これらの経済圏は全て緊縮財政を実施しています。
アメリカ・イギリス・ユーロ圏が日本と同じ経済規模であると仮定すると、アメリカは年間の財政支出が5兆円少なく、イギリスは10兆円少なく、ユーロ圏は15兆円少ないことになります。
特に、失業率が10%あって需給ギャップが大きく開き、財政支出が15兆円低いユーロ圏よりも日本はインフレ率でもGDP増加率でも負けています。
財政出動がGDP全体を増やすとか、インフレ率を上げるとかいう話は事実とまったく整合しないことがわかります。
浜田参与のほか、在野リフレ派が事例やデータを見たがらないのは、自分たちの信じたいことと事実が整合せず、説明できないことが多いことを嫌っているからでしょう。
そのような人びとの言説に従った経済政策が失敗するのは当然であります。