ETFと円高・金利の上昇


7月末の会合で、ETF買い入れの倍増を日銀が発表しました。
これ自体は良いと思うのですが、劇的な効果を期待するものでもないのでしょう。
株価が維持しやすくなるといった、ディフェンシブな効果があると思います。
ただ、ETFの買い入れが最も効果的だと主張してきた「理論的」な人たちは、買い入れ倍増の発表と同時に円高が発生した気まずさのせいか、ぜんぜん関係ないマイナス金利について貶したりしていて、体面維持に必死な情勢のようです。
金融政策の方向性の見当をつけるために「○○ルール」といったものがあるのですが、よくある誤りは、こういうものを事実・真実と混同することです。
積極財政主義に傾く人は、即効性・わかりやすさ・奇抜さを、求める傾向があり、専門用語的な言葉を多用してハッタリをかます傾向があるので、「○○ルール」のような話が大好きです。
しかし、こういうルールは目安に過ぎないので、当たるわけではありません。当たらなくても責めるべきものでもありませんが。
「○○ルール」のようなものは、その学者の洞察・意見であり、傾聴・実践に値するものではありますが、実際にやってみて足りなければ修正すべきものであり、競馬の予想のように的中を狙う類のものではありません。
そもそも経済学に本当に詳しければ、その手の予想をしたがるということはないはず。
「数ヶ月先の為替レートやGDPの予想はできない」はずなので、そういったことをやりたがっている時点で、私はそういう人の専門性を疑います。
実際、在野リフレ派の「理論家」と呼ばれている人はいろいろ予想し続けていますが、当たったのを見たことがありません。
その人の予想の3倍以上の金融緩和をしても、2%インフレどころか、現在も0%近傍でしかありません。

イナス金利の拡大は

マイナス金利の拡大が今の情勢では最も常識的な手法のはずなのですが、おそらく行われないでしょう。*1
銀行の社会的権力に日銀が屈している感じですし、安倍政権も財政をやりたくて仕方ない感じで、財投債を買ってくれる銀行の意向に従う気配です。
そもそも財政投融資の活用なんぞ打ち出したら、銀行の発言力が増して金融政策の妨げになることくらい当たり前の認識だと思うのですが、安倍政権に政策提言しているアドバイザーは、政府の中にいるか外にいるかをとわず、どうも金融・財政政策についてトータルな認識を持っていない感じなので、手足をバラバラに動かすような政策を実施して、相互に矛盾させています。
この間、非常に長い期間の金利が上昇したそうですが、その辺の国債を増発すると発表したのだから当然です。
財政政策は、金利に上昇圧力をかけるので、金融政策の効果を阻害します。
しかし、安倍政権はこのまま突き進むでしょう。
金融緩和は続行しているので、財政政策にもそこそこ効果があるように見えるようになるのかもしれません。
ETFの買い入れといい、財投債といい、国債増発といい、積極財政主義者の提言どおりに政策を組んだことによって円高金利の上昇を招いていますが、安倍政権はこのまま行くでしょう。
「政治は結論先にありき」ですね。

*1:拡大どころか、銀行に財投債を買ってもらうためにマイナス金利をやめる可能性も出てきました。「金利を上げてデフレ脱却」という民主党同然の流れ。