財政政策に効果があるという前提は詐術
積極財政主義者の常套手段は、話のはじめを「財政政策には効果がある」とか、「財政に効果があるのは経済学的に正しい」という前提で始めるところ。
これらの言い分には実は根拠がありません。
財政政策の効果に懐疑的な意見は、専門家の間にも普通に見られます。
財政政策乗数の日米比較
日銀国際局から出た論文。この論文に示された主張は日銀の公式見解ではありませんが、専門的な分析で、専門的な水準をクリアしたものであります。
この論文によると、アメリカでも日本でも、財政政策の乗数は1を下回ります。
つまり、財政支出したよりも少ないGDPの増加でしかないということです。
この見解が正しければ、財政政策をし続けると政府債務は発散することになります。
また、世界的な経済学者でも財政政策の効果に疑問を呈している人は、これまた普通に存在します。
谷内満のホームページ
この記事の指摘では、
- 英国は財政支出の増加をほとんどせずに大恐慌から脱出した、と若田部昌澄教授が指摘。(現在は意見が変わった?)
- アメリカの実務家エコノミストの30パーセントは、財政政策にほとんど効果がないという意見。
- バロー米ハーバード大学教授、ルーカス米シカゴ大学教授、サージェント米ニューヨーク大学教授、ブキャナン米ジョージメーソン大学教授、ベッカー米シカゴ大学教授、プレスコット米アリゾナ州立大学教授、マンキュー米ハーバード大学教授、テーラー米スタンフォード大学教授、は財政政策の効果に懐疑的。このうち、ノーベル賞受賞者は4人。
このように、財政政策の効果は経済学的に見ても怪しいものでしかありません。
にも関わらず、無駄かもしれない財政出動に多額の税金を費やしてしまうのであれば、効果が出なかった場合には責任を問われてしかるべきであります。
本来はそのようにあるべきなのですが、実際には誰も責任を問われないのが財政政策の悪弊なのであります。