「長期停滞」に金融緩和が有効?


ちょっと調べられたらすぐに底が知れるいい加減な発言をする心理がわかりにくいです。
サマーズの長期停滞論に乗じて一席ぶっている在野リフレ派の「理論家」によると、

この局面から抜け出すためには、思い切った政府による財政出動中央銀行による金融緩和が必要である。

という意見が、

これらの「長期停滞論」の研究アプローチは研究者によって異なるが、ほぼ共通しているのは以下の部分である。

なのだそうです。
世間では、ある意見の内容を読まずに賛成・反対を主張する人が多くて、その心理もわかりにくいです。
安倍政権の財政刺激「20兆円」案に賛成・反対うずまいていますが、中身を読んでからにするべきではないかと思いました。
あの内容なら財政嫌いの私もあまり気にならない内容でしたね。あのとおりに進むなら、理性はまだ失われていないというか。
ただ、リニア延伸工事は10年後から開始されるということですが、その資金をいま調達して、10年の間どのように利用するのでしょうか。
まさか溜め込むのではないでしょうね。
話がそれましたが、上に書いた在野リフレ理論家の叙述とサマーズ氏本人の主張を比べてみると・・・
ローレンス・サマーズ:金融政策で需要不足は解決できない – 浜町SCIコラム

  • インフラ投資の拡大: 金利は安いのだから老朽化した空港、学校、水道、航空管制システムを更新・新規導入すればいい。

公共投資は短期的には雇用を増やし、中期的には経済の供給力を増やし、補修先延ばしを防ぎ、子供たちの世代の負担を減らす。

  • 民間投資の刺激: 脱石炭と環境にやさしい発電。
  • 税制改革: 租税回避を防ぐための改正が必要。

租税回避をやめるふりをする企業に恩恵を与えるような制度はだめ。

  • 移民政策: 熟練労働者や起業家を逃がさないように。
  • 輸出積極化策: 貿易協定、輸出の安全管理、The Export-Import Bankの拡大。
  • 住宅政策、最低賃金・労組幹部の処遇改善による格差縮小・支出拡大・需要増・経済成長

ここで挙がっているのはいずれも財政政策・構造改革であって金融政策ではない。
金利低下で需給ギャップを埋めることは、ゼロ金利制約の中で不可能と考えているからだ。
では、なぜ日欧はマイナス金利を続けるのか。
金利低下よる通貨安というチャネルを狙ったものであり、他国から需要を奪い取ろうという作戦だからだ。

サマーズ氏本人が、長期停滞からの脱出に金融政策は有効でない、と明白に述べているのですよね。
これはいろいろな人がネットで言及しているので、ちょっと検索すればすぐに出てきます。
最近の安倍政権の動向は、サマーズ氏の意見に影響を受けていることが見て取れます。政権内で政策提案をしている人たちがサマーズ氏に同調しているのではないかと思います。
ただ、サマーズ氏は構造改革をも主張していますから、安倍政権はその辺には消極的なようです。
一方でサマーズ氏は、日本のマイナス金利については肯定的でした。
マイナス金利「おおむね妥当」 サマーズ米元財務長官:朝日新聞デジタル
くだんの在野リフレ理論家は、マイナス金利に否定的でした。
つまり、今の日本が長期停滞に当てはまるかどうかについて、サマーズ氏と「理論家」は見解が異なるということなんでしょう。