補正(注目)・最低賃金(有害)・政府債務(デマ)


参議院選挙で安倍政権が勝ったのは良いのですが、財政政策をめぐる論議を見ていると、「調子にのっている」という言葉がぴったりな感じになってきました。
アベノミクスのこれまでの経緯を見ていると、財政を拡大するたびに経済の調子が悪くなるということを繰り返しています。
今現在もそうです。
いま、2015年度の補正予算が執行中であり、2016年の一般予算は昨年度よりも拡大されて執行されているわけですが、調子が良くないですね。
補正予算が執行される時期(4〜6月くらい)になると大体調子が悪くなります。
積極財政主義者は、財政を出すまでは五月蝿く自己主張しますが、実際に執行されると、結果がどうなったかについては無関心になってしまい、次は来年の財政出動について、出せ出せと五月蝿く言うだけであります。
まるで出すことだけが目的のようです。
秋の国会で10兆円の補正が組まれるそうですが、「財政出動でむしろ経済が悪くなる」というパターンを破れるかどうか注目です。

低賃金上げは有害

安倍政権、特に公明党は、左派の政策を先取りすることで左派への支持を取り込むという戦術をとっているのか、或いは左派の既得権と関係を深めているのかわかりませんが、反経済学的な政策も目立ちます。
最低賃金上げを進めるという報道がありましたが、これは無駄を通り越して有害であります。
最低賃金を上げて非正規の待遇を上げるというのが建前上の目論見だそうですが、最低賃金に生活を依存する貧困層はあまり存在せず、日本の場合は8割くらいが年収300万円以上であるという調査があります。
最低賃金を上げても、それはバイト学生やパート主婦の小遣いを増やすだけですし、低待遇の非正規でも最低賃金でなければ恩恵は全くありません。
最低賃金でなければ待遇は良い」とは言えませんから。
また、最低賃金を上げると労働供給が減ります。
パート主婦にとっては特に「130万円の壁」を超えたくありませんが、最低賃金が上がるとその壁にいままでより速く到達してしまいます。
現在、金融政策の効果で人手不足が発生しはじめており、ただでさえ「壁」に到達しやすくなっているところに最低賃金上げをすると、さらに人手不足が悪化するでしょう。
構造改革をしないことへのしっぺ返しです。

府債務は民営化と借り換えで?

安倍政権はプライマリーバランスの2020年目標をまだ放棄していないのでそれは良いのですが、巷ではさかんに「政府債務は問題ではない」という言説が繰り返されています。

営化で借金返済?

民営化というのは、政府関係機関が対象だと思うのですが、それを主張する人は財政投融資にこの間賛成していたはずなんですが。
財政投融資を活用して財政出動するということは、その融資先は政府関係機関独立行政法人などですから、民営化と逆行しています。
むしろ活用すると安倍政権は言っているので、それはつまり「民営化はしない」という意味だと普通は思います。
民営化を主張するなら、具体的にどの機関をするべきなのか、理由付きで挙げるべきでしょう。
それに、民営化で政府債務が減るというのは本当なんでしょうか。
できるとしても大した額になりそうもないのですが。

久借り換え…

債務の永久借り換え論というのはおそらく、借り換えをしながら名目GDPが拡大していけば問題ないレベルになっていく、というものだろうと思います。
ただ、その手法として財政拡大を主張するところに矛盾があります。
財政が拡大して債務が増える以上に名目GDPが増えなければいけませんが、財政政策にそんな力があるかどうかが疑わしいわけです。
金融政策を併用しているアベノミクスの期間だけをとってみても、財政が拡大した時期に経済が拡大してきたわけではありません。
積極財政主義者は、財政を拡大した分のGDPが増えるということと、結果的に全体のGDPが増えるということを混同しています。
さきほども書きましたが、補正予算を執行中のいま、経済の調子があまり良くないのは、財政以外の事情に財政が押し戻されているからであって、こういう力の弱さが、債務を増やしながら財政を拡大することへの疑問を生んでいるのです。
安倍政権が誕生してから、補正予算だけでも合計10兆円は支出していますが、目立った効果がありましたか?
政府債務を積極的に返さない方針で行くとしても、経済の拡大は金融政策が主体であるべきですし、歳出は削減するべきでしょう。
歳出を削減しても景気が悪くならないのは、先進各国の経験で証明ずみです。