財政赤字へのスティグリッツ氏の見解

最近の在野リフレ派とそれに連なる積極財政主義者の主張はまことに酷いもので、嘘を並べ立てて「これが経済学である。分からない者は馬鹿である。」と、「裸の王様」を彷彿とさせる大衆動員のためのデマを臆面もなく流しております。
財政赤字への彼らの主張をまとめると次のようになります。

  1. 一年間にどれほど財政赤字を出しても何の問題もない(プライマリーバランスは無意味)
  2. 政府債務の水準がどれほど高まっても何の問題もない(国債無限発行可能論)
  3. 政府債務は償還する必要がまったくない。日銀に買わせて永久に借り換えさせても何の弊害もない
  4. 政府債務の利払いが国民の生活に与える影響などまったくない。
  5. 政府債務は政府資産の売却で賄えば良い。(日銀永久ロールオーバーと矛盾するうえ、財務省を従わせるあてなど全然ないにも関わらず。)

在野リフレ派とそれに連なる積極財政主義者の主張には論理的な根拠は一切なく、「スティグリッツが言っているから、クルーグマンが言っているから財政赤字は正しい」という権威主義まる出しの態度でプロパガンダに励んでいますが、在野リフレ派の本職の学者を除いては経済学の初級教科書すら通読していないことが明らかであります。
彼らの上記の主張は経済学でも何でもありません。経済学の教科書にはそのようなことは書かれていません。
積極財政主義者として知られているスティグリッツ氏であっても、本職の学者である限りは、財政赤字について在野リフレ派とそれに連なる積極財政主義者のようなことを言っているはずがないので、氏の教科書を入手して読んでみました。

ティグリッツ氏のマクロ経済学初級教科書では・・・

スティグリッツ マクロ経済学(第4版) (スティグリッツ経済学シリーズ)

スティグリッツ マクロ経済学(第4版) (スティグリッツ経済学シリーズ)

p252
減税されたときに人びとは消費支出を増加させるので、財政赤字を相殺するほどには民間貯蓄が増加しない。その結果、国民総貯蓄は減少する。したがって均衡実質利子率は上昇し、投資が減少する。将来世代はより少ない資本ストックしか受け継げない。将来世代はそれによって所得が低下する。
p697
政府債務は自分自身への債務であるゆえ問題ではない、という議論は三つの点で間違いである。
1、債務は投資に影響をおよぼし、将来の賃金と生産性に影響を与える。
2、海外から借り入れる場合、家計の借金と同じで現在の過剰消費のツケを将来世代が背負うことになる。
3、債務の利子を支払う場合、税金の増加を必要とし、税が経済を歪め、労働や貯蓄を行う気持ちを薄れさせる。

書店で立ち読みすれば確認できます。
予想どおりというか、経済学の標準的な教科書で財政赤字を無害と言っているはずがなく、どの教科書でも同じような結論が書いてあるに決まっています。
財政赤字は税で賄わなくてはならないとか、財政赤字が国民の生活水準に悪影響を与える、というのは経済学で普通に習う内容であり、これがてんでバラバラであったら、それは学問とは言えません。
このような初級マクロですら全く読まずに経済学に詳しいフリをしてウソ八百を広めている在野リフレ派とそれに連なる積極財政主義者は、単に無知であるというよりも、何かが異常である党派であると見るべきなのでしょう。
非常に危険な政治集団と化していると思います。