原油と為替レート

原油価格低下の影響でインフレ率が下がっていること自体はそれほど問題がなく、雇用者数は相変わらず増えているので失業率が2月に上がったことも別に問題になりません。
インフレ目標がなかなか達成できないことについて反対派は叩いていますが、経済の実体が好転し続けている点を主張していくことができます。
この辺の話を有利に進めやすくするためにも、インフレ目標のサブ目標として(本来はメインなんですけど)、名目GDP成長率の望ましい目安をも合わせて日銀が提示するべきでしょう。

題は円への資金流入

ポジティブな供給ショックが発生したときに金融緩和をする必要はない、という見方に個人的に納得してきましたし、今も納得しているのですが、それは実体経済の生産コストについての話です。
この辺について考えが深まるきっかけになったのは、今般発生している、原油と為替レートの関係です。
原油が下がりすぎて日本円に資金が流れ込み、円高を発生させています。
原油は資金運用のための資産として扱われていて、円への需要にも大きな影響を与える特殊な商品なのだと思います。
原油が下がると生産コストが低下して経済にプラスの影響があるはずですが、下がりすぎると原油での運用を嫌った資金が円高と株安を引き起こしますから、資産市場の悪化を通じた、日本の実体経済の悪化が見込まれる情勢になっています。
非常に興味深い現象で、原油という特殊な商品が供給過剰になっていることに対して、金融緩和して日本円への需要を下げる必要が出ているわけです。

和量の増加とマイナス金利

金融緩和の量とマイナス金利をばらばらに捉える向きが目立つのですけれども、奇妙に感じます。
(ただ、マイナス金利の唱道者がリフレ政策を批判していることにも同じように奇異な印象を受けますが。)
今のように予想インフレ率が上がりにくい状況では、マイナス金利を利用するのがむしろ当然でしょう。
今の日銀がどれほどマイナス金利を拡大するかという点がひとつ関心を呼んでいますが、個人的にはさほど拡大しないだろうと思います。
黒田総裁は、「理論的にはマイナス金利に制約はない」と発言していますが、同時に「個人預金にマイナス金利がつくことはない」とも言っていますし、そもそも「マイナス金利付き量的・質的緩和」という政策名にしていることからも、マイナス金利にはそれほど傾斜しないということが推察できます。
日銀や財務省はマイナス金利を使った景気回復の理論についてレクチャーを受けた上で現在のような政策を行っているのですから、マイナス金利だけで強力に金融政策をしようとは考えていないでしょう。
個人的にも、マイナス金利だけでやろうとすると、個人預金にもマイナス金利がつくほどにやらなくてはならないことになりますから、それは日本のように金融資産にしめる銀行預金の比率がとても高く、節制して貯金することが生活上の美徳にまでなっている社会には合わないだろうと思います。
それをやってしまうと、金融政策そのものに国民が否定的になってしまいますから、不適切だと思います。
ただ、個人預金にマイナスがつかない程度のマイナス金利はどの辺かを日銀は探っているのではないでしょうか。
4月の会合でマイナス金利を拡大するかは微妙なところで、おそらくやらないんじゃないかと思いますが、個人的には量的緩和の拡大、緩和手法の多様化(質的緩和)、マイナス金利の拡大、をしてほしいと思います。