最低賃金制は貧しい人を苦しめる

最低賃金を毎年上げていきましょう、という愚かな政策に安倍政権が踏み出していくそうですが、経済財政諮問会議の議事録にそのやりとりがありました。
平成27年第18回経済財政諮問会議
ちなみに、3%ずつ上げるのは一般的な賃上げの話であって、最低賃金ではありません。
安倍首相は経済学の専門家ではないので仕方ないのですが、経済成長のために人々の可処分所得を増やすのあれば、他にもっと良い方法がありますし、そもそも消費税を上げなければよいのですが、最低賃金引き上げは消費増税を押し通すための目くらまし、という見方もできます。

ンキュー

マンキュー経済学〈1〉ミクロ編

マンキュー経済学〈1〉ミクロ編

マンキュー経済学〈2〉マクロ編

マンキュー経済学〈2〉マクロ編

  • 最低賃金は未熟練労働者に影響を与える。熟練度の高い労働者はもともと均衡賃金が最低賃金より高いので影響を受けない。よって、主要な失業の原因にはならないが、未熟練労働者の雇用に影響する。たとえば、アメリカの10代の若者に影響する。ただし、最低賃金を上回る賃金を受け取る若者には影響しない。
  • 最低賃金が上昇すると、アメリカでは学校を中退して働くことを選ぶ生徒が増加する。その結果、もともと中退して働いていた若者の雇用が奪われるので、失業が発生する。
  • 最低賃金を得ている人のうち、貧困ラインを下回るのは3分の1に過ぎない。残りは、小遣いがほしい中産階級の若者。従って、貧困対策として最低賃金制は有効でない。
  • 労働組合が賃金を均衡賃金以上に上昇させると、雇用されている者は生活が向上するが、失業している人は仕事につけず、生活水準が低下する。
  • 仕事のない人々は、労組のない仕事につくので、そこの労働供給が増加し、その産業の賃金を低下させる。つまり、労組に属していない人々が、労組が上昇させた賃金の悪影響を負担することになる。労働組合のある企業の高い賃金は、労働組合のない企業と労働者の犠牲のもとに成り立つ。

マンキュー マクロ経済学 第2版〈1〉入門篇

マンキュー マクロ経済学 第2版〈1〉入門篇

  • アラン・クルーガーらによる、最低賃金を引き上げた際に雇用が増加した、という研究はデータの信頼度が問題視されている。
  • 企業が要素市場において需要独占の状態であればクルーガーらの観察したような結果がありうる、という説明についても、実際にはほとんどの企業が労働市場で競合しているのであるから、納得できない。
  • 最低賃金法よりは、給付付き税額控除の方がよい。

田達夫

ミクロ経済学Expressway

ミクロ経済学Expressway

  • 日本では最低賃金が均衡賃金を下回るか同じであると考えられるので、引き上げても影響が薄い。しかし、アメリカでは高卒の若者に失業が集中する原因となっている。
  • 最低賃金を引き上げると、労働市場に新たな参加者が入ってくる。この人たちが雇用されることにより、もともとより低い均衡賃金で働いていた人たちが失業する可能性が出てくる。つまり、働く必要性の高い人から低い人に仕事が奪われる可能性がでる。その配分は、運やコネで決まることがある。
  • 最低賃金によって生産者余剰は当然減る上、消費者余剰(この場合労働者)についても、賃金上昇効果よりも雇用減少効果の方が大きければ、余剰が減ってしまう。
  • 社会全体の総余剰はかならず減少する。
  • 最低賃金を引き上げると、働く必要がそれほど切実でない者に仕事を与え、働く必要が切実である者から仕事を奪うことがあり、それは運やコネで決まってしまう。
  • 労働需要曲線が垂直であるような地域では、最低賃金の引き上げが雇用を増やすことは確かにあるが、その場合でも総余剰が減少すること、切実に仕事を必要とする人から仕事を奪う効果が発生することは変わらない。最低賃金はより貧しい人をさらに苦しめるという本質を持っている。