「成長重視」が本当なら慶賀すべきことだが…


財務省と対立してまで成長重視に転換したという話が本当なら素晴らしいことですけど、良すぎる話にはとびつかないように自戒。

焦点:激論の末の「骨太」、首相は成長優先 財政再建失敗リスクも
2015年 07月 3日 15:47
[東京 3日 ロイター] - 激しい攻防が水面下で展開された安倍晋三政権の財政再建への指針「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」。財務省内閣府の対立が表面化したが、「第三者」による瀬戸際の仲裁で異例の決着をみた。ただ、安倍首相の本音は「成長優先」にあり、外的な経済ショックで成長がとん挫すれば、財政再建が失敗するリスクも内包する。
安倍首相のリーダーシップが問われる局面が、いずれやって来る。
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKCN0PD0J720150703?sp=true

「安倍に失敗して欲しい」という気持ちがにじみ出ている記事です。
「外的な経済ショックで成長がとん挫」することを、期待する人、心配する人、合わせるとけっこうな数になると思うのですが、またも「金融政策偏重派」のレッテルを貼られると思いますが、金融政策で対策をとれば、成長が完全にダメになってしまうことは考えにくいです。
実物ショックは大したことないですし、金融ショックに対しても、本気で金融緩和すれば半年とか一年で何とかなると思います。
リーマンショックからの回復にアメリカは5年くらいかかってしまったわけですが、そんなに時間がかかったことに批判が出ているということは、やりようによってはもっと早く回復できたという意見があるということになります。

だが、安倍首相とその周辺は、今回の骨太方針の決着について、ある政治的な意味を見出している。首相周辺の関係者の1人は、目安の1.6兆円について「よく読めばわかる。1.6兆円などはあくまで脚注になっていて、本文に入っていない。それがポイント。何も縛らないようになっている」と言い切った。
首相に近い政府関係者は、19日の段階で「安倍首相から、将来の歳出ペースに縛りをかけるなと言われた。骨太の表現は、その首相の意向に沿っている」と述べた。
さらにその関係者は「成長に伴う歳出に縛りをかけると、かえって成長を抑制することになるというのが、首相官邸の意向だ」と語る。

私は金融政策重視派なんですけど、借金できないように縛りをかけるという案は非合理的すぎて反対です。
重要なのは借金する程度なんであって、借金自体が悪いわけではないですし、借金は必要なものですから。
借金しないで経済をうまく回すことなんてできないんじゃないかな。
こういう記事を書くマスコミ企業も、経営に際しては必ず借金してるわけで。
使うお金を緩めたり引き締めたりという行為は柔軟にできる方が便利なのは当たり前で、それを年度でいちいち区切るなんて、どういう正当性があるのか全くわかりません。

歳出規模が税収の2倍にも膨れ上がっている国は、主要7カ国(G7)で日本しかない。国際通貨基金IMF)への返済が遅滞し、事実上のデフォルト状態に陥っているギリシャでさえ、単年度の歳出と歳入の規模は均衡状態にある。

ギリシャ国民投票が話題になっていて、いつのまにかギリシャ問題は財政問題だという前提で語られるようになってしまいましたが、いやー、ギリシャはどう見ても金融政策問題ですよね。
それ以外あるんでしょうか。
ユーロやEUの非合理性、矛盾が問題の根源なんであって、財政はあんまり関係ないと思うのですが。
ギリシャに対してEU中核国が、「カネ返せ」ということ自体がおかしいんですよ。
日本政府が秋田県徳島県に向かって、「今まで渡した地方交付税交付金を耳を揃えて返さんかい」などと言いますか?
EUが「一つのヨーロッパ」を本当に目指しているなら、「カネ返せ」なんて言わないはずです。
言っているというところにEUの矛盾があります。
ギリシャはせめてユーロには加盟しないで、一人でのんべんだらりと過ごして、たまに適度なデフォルトをして世界から呆れられる、という暮らしをしていた方が、今のような深刻な状態に陥らなかったんじゃないでしょうか。
いまからでも遅くないのでドラクマに戻すのがいいと思うけどなぁ。
輪転機くらい他国のを借りればどうにでもなるでしょう。