ミニマムアクセス米というムダ
TPP交渉の記事に主要農産物の関税が出ていたのですけれども、これは酷いな、と改めて思いました。
品目 | 関税率(%) |
コメ | 778 |
小麦 | 252 |
脱脂粉乳 | 218 |
バター | 360 |
砂糖 | 328 |
牛肉 | 38.5 |
これら農産物の国内価格が高いから、それを守るために高い関税を支払わなくてはならないのです。
国内農産物の価格を下げて、関税を撤廃できるようにすれば、所得の低い人たちの毎日の生活が楽になります。
国産小麦は、日本における小麦消費量の14%しかありません。しかし、国産小麦の高い価格を守るために輸入小麦に関税をかけ、私たちが消費する小麦全体の価格は釣り上げられているのです。*1
政府の規制によって国内農産物の価格が釣り上げられているということは、通常よりも多い利益がどこかに生じていることになります。
レントですね。
農業の規制に関わっている、官僚・政治家・農協の間で、そのレントがどのように配分されているのでしょう?
一部の特権階層が、一般国民の生活を犠牲にしながら肥え太っている一例、ほんの一例がここにあります。
このような腐敗をどういうわけか、「弱者の味方」を自認する左翼政党や「愛国保守」が擁護する奇妙な風景も観察されます。
左翼と保守は、ふだんは様々な論点で対立しているにも関わらず、農政のような利権にまつわる事柄ではほとんど同じ主張をしています。
まるでネタ提供元が同じであるかのような言葉遣いで。
構造改革に反対することにおいては左翼・保守が同調し、経済クラスタであっても偏見を持っている人が多いですが、実際のところ、農業構造改革は所得再分配になるということを理解してほしいですね。
コメの輸入枠拡大要求
TPPと日本のコメ | キヤノングローバル戦略研究所(CIGS)
国産米の生産量は844万トンです。国産米生産量の9%にものぼるミニマムアクセス米を輸入して、ろくに活用していないという税金のムダを延々と行ってきているわけです。
農政が通商交渉を妨害する
農政に関わる一部の特権階層の利益のために、国民全体の利益になる通商が妨害され、左翼と「愛国保守」の扇動によって、排外主義さえ醸成されてしまいます。
TPP交渉と日本の農政 | キヤノングローバル戦略研究所(CIGS)
- 日本が農産物関税を無くそうとしないため、相手国は工業製品への関税を無くそうとしない。(ベトナムの自動車への関税は80%)
- TPPで問題となっている農産物の生産額は4兆円しかなく、自動車産業の13分の1。
- アメリカでは日本車への関税がかかる。韓国は米韓自由貿易協定を結んだため、競争条件が日本より有利である。
- 関税を守るために農産物の輸入枠を設けるという日本のやり方は食料自給率を下げる。
- コメの生産額は1兆8000億円だが、税金による補助が4000億円。価格つりあげによる消費者負担が6000億円ある。つまり、合計1兆円を国民負担に依存してコメは生産されている。
- コメの高い価格を守る政策をやめ、米価が下がった分を農家に補助する政策に切り替えると、国民負担は2000億円に低下する。
- 0.5haの農地しか持たない零細コメ農家と比べ、15haの農地を持つコメ農家は、コストを半分に下げられる。
- 1ha未満の農地しか持たない農家は、農業から得られる所得はゼロである。
- 一方、20haの農地を一人で耕作するなら、1450万円の所得が得られる。
- 減反政策開始以降、収穫向上のための品種改良がタブーになったため、日本の収穫効率はカリフォルニア米より4割低い。
- 高いコメ価格を維持する政策によって、コメは守られるどころか、10年で産出額が半減した。
- 農協はコメで6割、農業資材では5〜8割のシェアを持つが、独占禁止法の対象外である。
- 農協が提供する農業資材の値段は、アメリカの2倍である。
要するに日本の農政は、意図的に効率を下げて特権階層の利益を守り、一般国民にその負担を押し付けているわけです。
また、農政は「日本人の魂」などと言われるコメ農業を衰退させてもいるわけです。
このような、官僚・政治家・農協によるレントシーキングを守ろうとしているのが、共産党のような左翼であり、チャンネル桜のような「愛国保守」であるわけです。