バター不足の原因は?


バター不足がたびたび話題になりますが、マスコミの論調はたいていは「お可哀想な弱者・農家の苦境」というストーリーで、酪農だろうがコメ農家だろうがいつでもワンパターンの展開で記事を書いているので飽き飽きいたします。
めちゃめちゃ上手く行っている野菜農家の話題はマスコミにはあまり出ません。
農家を弱者にしたてて既得権を守るという手法であります。
多くの国民は弱者をことさら苛めようとは思いませんので、「酪農家が苦境に陥っている」という話を聞けば、「バターの価格が上がっても買ってあげようか」という気持ちになってしまいます。
しかし、弱者を偽装するこの手のお話にはだいたい裏があるもので、バターが不足する原因は、競争制限によって得をしている特権的な人々がいるからに過ぎません。
日本はこの種の話が多すぎてウンザリさせられます。
バターが不足する原因は非常に単純で、次の2点が原因です。

  • バターの輸入にかかる関税が高すぎて、その枠で輸入したバターは値段が高くなりすぎて買ってもらえない。だからこの枠では輸入しない。
  • バターを低関税で輸入できる枠は、農水省が指示を出す団体*1が独占していて、バター不足が発生しても、バターを輸入する指示を農水省がロクに出さない。


ということであります。
つまり、輸入を制限することで国内のバター価格を吊り上げているだけであります。
日本の農産物問題はほとんどこの構図で、弱者を偽装することで価格つりあげ行為を誤魔化しているのですね。
国際市場ではバターは余っているので、バター不足で消費者が困っていたら、即座に解決できるのですが、農水省がやろうとしないだけです。
安いバターが入ってきたら国内の酪農家が困るって?
だったら酪農家に政府が補助金を出してあげれば良いですよね?
欧米ではそうしているのですから、日本が行っても何の問題もありません。*2
今年の食料・農業政策の課題 | キヤノングローバル戦略研究所(CIGS)

*1:農畜産業振興機構

*2:ただ、競争力のない産業を無理やり維持する必要性を個人的には感じません。日本は競争力のない産業を政府が、つまり国民の税金で維持している例が多すぎて、非効率きわまりないです。経済成長を気にするなら、そういった退廃を問題にして構造改革を推進するべきですが、なぜかマスコミはそうしませんね。また、構造改革に対しては経済クラスタの人たちからも反感を持たれていますが、いわゆる構造改革論構造改革を区別する必要があります。構造改革論というのは、構造改革をすると景気が良くなるという趣旨のものですが、これを方便で言う人は許せるとしても、本気で言う人もいるので困りものであります。マクロ経済学や金融論を勉強したことがないのではないかと思われる学者が構造改革論を述べているので、経済クラスタから否定されてしまうのですよね。構造改革論者は構造改革を語るべきではないと私は思います。「構造改革」に代わる上手い用語があれば、そちらを使って構造改革を支持したいなぁと感じますね。