いつも間違った答を出す人

自分のあずかり知らないことについて、もっともらしい語り口でデマを流し、その分野に明るくない人々を騙すことに喜びを感じているらしいブロガーが、またも間違ったことを滔々と述べております。
2014-11-06 - カンタンな答 - 難しい問題には常に簡単な、しかし間違った答が存在する

アベノミクス開始前は、円高とデフレが諸悪の根源であるかのように喧伝され、黒田日銀による異次元緩和による円安誘導はかなり好意的に受け止められたが、残念ながら「円安で輸出主導の景気回復!」が期待はずれだったことがはっきりしてきた。

円安で輸出が伸びるという想定がまず間違い。この点は安倍首相も菅官房長官も間違っているので修正して欲しいと思うのですが、円安が貿易にもたらす利益は輸出数量に限定されません。
輸出数量が伸びることもあるのでしょうが、伸びなくても利益は増大します。
現在、トヨタなどの自動車産業が大きな利益をあげていますが、あれは数量のみならず、ドルの受け取りが増えているからです。この効果はアベノミクス初期にも観察されました。
そもそもよく考えて欲しいのは、円安で日本製品の価格が下げやすくなったとしても、それで多くの製品が売れるとは限りません。相手国の景気がよくなければ買ってもらえないわけで、円安によって輸出数量を伸ばそうという目論見には無理があります。
伸びるかも知れない、メリットの一つになりうる、という言い方に留めるべきでしょう。
また、この点で重要なのは、輸出量が伸びなくても日本の景気は良くなっている、という事実であります。理屈ではなく
ごちゃごちゃした理屈は無限にこね回すことができるものですから、まともにとり合うものではありません。重要なのは事実です。
この事実は、円安にしたとしても必ずしも海外の製造業者の不利益にはならず、しかも日本の景気はよくなる、という一石二鳥の発見なのですから、本来はみんなで万歳するべき事柄です。

まず円安による輸入物価の上昇がコストプッシュインフレとして多くの国民の生活に影を落とすにいたって、円安、インフレにさえなれば景気が回復すると期待していた(期待させられていた)人々がおかしいと思い始めた。

影?どのへんに?
輸入価格の上昇でカップラーメンの値段が上がったとか、そういう話ですか。
ああいう話はマスコミのネタになりやすいので、このブログ主のようにテレビの報道を鵜呑みにしている人には深刻なものに感じられるのでしょう。
カップラーメンの値段が上がったとして、その影響を考えるにはちょっと計算してみればいいと思います。
カップラーメンが去年と比べてどの程度値上がりしたか、自分はカップラーメンをどの程度の頻度で食べるか、ということを考えて計算するとおそらく、去年と比べて月に数百円の負担増にしかなっていないはずです。カップラーメンをそれほど食べない人なら、せいぜい100円くらいでしょう。
こんなものが「影」のはずがありません。

そして、やや意外にも見えるが、次に「円安はもうたくさん」と言い始めたのは経済界だった(「経団連会長「これ以上の円安は日本経済にマイナスの影響」」)単純に海外市場向けの輸出だけを考えるなら円安はどれだけあっても困らないのだろうが、国内市場もまた彼らの収益源であることは間違いなく、そういった意味でもあまりに行き過ぎた円安が国内市場にダメージを与えるのは好ましくないという判断が働いたものと考えることができるだろう。

この点について、誰かが声を大にして言わなければならないことがあるのですが、それは「輸入価格が上昇するのは好ましい面もある」ということであります。
輸入品の価格が上昇すると負担増にしかならない分野は当然あるわけですが、メリットが発生する分野もあります。
それは、輸入品と競争している国内産業であります。
輸入品の価格が上昇すると、国産品への需要が増加しうるのですから、この点では「国内市場」には追い風となります。
このブログ主はこういったことは全然視野に入っていないようであります。
輸入品競合産業へのメリット、というのは実は「輸出量増加よりもこちらの方がメインである」という意見もあります。
アベノミクス開始以前から、マーケットマネタリストの一部はそう主張していましたし、日本の現状を見ると説得的であります。
この点についても、政治家や財界はまったく理解していないので、誰かがレクチャーするべきだろうと思います。

例えば、先日のエントリーで考察したクルーグマンの指摘によれば、リーマンショック後の欧米はバブル崩壊後の日本より酷い状況となったわけだが、別にデフレになったわけではない。つまり欧米についてはデフレがその酷い状況をもたらしたわけではないという事である。 

単なる事実誤認。
ユーロ圏のいくつかの国ではすでに物価下落が続いています。ユーロ圏全体でもインフレ率は0.4パーセントしかなく、よく知られたとおり、しかしこのブログ主は知らないことですが、消費者物価指数は高めにでるので、このインフレ率ではユーロ圏全体でも物価下落が始まっていると見てもおかしくありません。
http://group.dai-ichi-life.co.jp/dlri/hata/pdf/h_1410p.pdf
http://group.dai-ichi-life.co.jp/dlri/monthly/pdf/1411_7.pdf

特に欧州についてはこれからデフレに陥ってしまうのではないか?と懸念されてはいるが、これはリーマンショック後、デフレに陥るのを食い止めるべく積極的な金融緩和をやってここまではどうにかインフレをプラスに維持してきたけど、肝心の経済の低成長化を食い止める事ができずに徐々にインフレ率も低下してきてこのままでは結局デフレになりかねない、、、という流れであり、ここでは明らかにデフレは経済の低成長化の結果であって原因ではない(デフレになっていないのだから当たり前だが)。 

ここはお馴染みの胡散臭い論理展開ですね。日銀白川もよく言っていたものですが。
ここでブログ主が言っている「成長」とは何なのですかね?
そこを明らかにせずに「成長」というのは、たいてい誤魔化しを広めたがっている人間です。

上記に加えて、異次元緩和以降のインフレは円安による輸入物価の上昇の後押しを受けたコストプッシュインフレの面が強く、これを更に進めてもインフレ率は上がるだろうが景気が好転するかは疑問である。

これまた単なる事実誤認。
現在の日本の物価は、消費税の影響をのぞくとむしろ伸びなくてなってきていて、低インフレが懸念されておるのですよ。インフレ目標達成に暗雲、といった報道が相次いだのは見ていないのでしょうか。
消費税による物価上昇はその年だけで終わりなので、翌年以降は需要減によるインフレ率低下が心配されるようになります。

敢えてプラス面?を言えば浜田宏一内閣官房参与の期待通りにインフレによる実質賃金の下落は順調に進んでおり、雇用も堅調に推移していることから企業業績(特に一部上場企業の)については更なる上積みが期待できるかもしれないが、既に完全雇用水準に到達しており、これ以上の実質賃金の下落による雇用刺激が経済全体に対してプラスになるとは限らない。

ああ、またも適当なウソを。
完全雇用水準になんて達してませんよ。
データを見てないのですかね。
先だって発表された雇用のデータを見ても、就業者は依然として増加しているのですよ。
自分に不利なデータは見ない主義ですか。

日本の場合はまだインフレ率が低いため、ターゲットを超え続けたインフレ率に関して英中銀が受けた逆風をすぐに経験する事は無いかもしれないが、もしインフレ率が2%を超えてくるような事態となれば、景気の動向に関係なく金融緩和終了への圧力が高まる事になるだろう。そして、ここで舵取りを間違えれば本格的なスタグフレーションに突入してしまうことになりかねない。

2%を超えたら金融緩和を終了し始めるのは当たり前ですし、このブログ主がスタグフレーションの意味を理解しているかどうか怪しいものですが、個人的には2%を超えても金融政策を安易に終了するべきではないと思います。
一旦は2%インフレ目標を掲げてしまった以上、まずはそれを達成しなければなりませんが、それ以降は名目成長率にも目配りした目標を掲げて金融政策を持続するべきだと思います。
本当なら名目成長率水準目標を採用するべきだと思いますが、名目成長率についての予想市場が現在は存在しないので、インフレ目標と名目成長率目標の併用というのがいいんじゃないかと思います。
インフレ目標は2〜3%の幅でとり、名目成長率(予想でなく実際の)は4〜5%の幅で目標をとって、両方達成することを金融政策の目的とする政策ですね。
インフレ率は金融政策の指針であって本質的な目的ではないので、より本質を観察しやすい名目成長率に重点をおくべきかと思います。