新古典派、三橋貴明

「賃金を上げさえすれば労働者がすみやかに集まります」という発想は新古典派的なんですけれども、建設業の現実で分かるとおり、賃金を上げても他の事情がからむ関係上、労働者がすぐに集まったりはしません。
そういった現実を目の当たりにして、自分の主張が現実によって冷徹に跳ね返されているにも関わらず、三橋貴明が今度は介護業界についておんなじことを言っています。

日本の介護サービスの人材不足を埋める手段は明確で、賃金を引き上げることです。そのためには、介護保険料や要介護者の負担を高めない形で、介護報酬を引き上げるしかありません。すなわち、政府の財政出動の出番なのです。
http://www.mitsuhashitakaaki.net/2014/07/21/mitsuhashi-135/

青文字部分、建設業に関して「労務単価を引き上げれば労働者は集まる」と三橋が言っていることと相似形を成しています。
これはもちろん欺瞞です。
労務単価は賃金ではないため、労務単価は引き上げられたが、賃金は企業が引き上げない、ピンハネする、ということは普通に発生しています。だからこそ、自治体によっては「公共事業で最低賃金を公定する」という対策をとっているのです。
同じ様に、介護業界において、介護報酬は賃金ではありません。介護報酬を上げても賃金を上げるかどうかは、それぞれの社会福祉法人に任せられているのですから、労働者の待遇がよくなるわけではありません。
というか、特別養護老人ホームを運営する社会福祉法人内部留保2兆円に到達しているので、介護報酬の引き上げなどやらなくても、労働者の賃金引き上げは余裕で可能です。
社会福祉法人にはほぼ税金がかからないので、保育園などもふくめた社会福祉法人全体では、毎年5000億円の黒字が発生しており、これは上場企業以上の利益率になっています。
その原資はもちろん、保険料と税金。
こんな現状を尻目に、「介護報酬の引き上げを!」などという三橋貴明は、社会保障業界のレントシーカーたちに、「そのように言って下さい」「あい分かりました」という遣り取りをしたとしか思えない不自然ぶりであります。