「実質賃金を下げて国際競争力アップ!」なんて言っている者が本当にいるのか?

まさかとは思いますが、それは三橋貴明の妄想なのではありませんか?
三橋の今のトレンドは「実質賃金」のようで、データが下がって見える現在に、出来る限り煽っておこうという作戦ですね。
名目賃金の上昇が物価上昇率を上回る企業が現れ始めるまでの命だとは思いますが、三橋の真似をして屁理屈をこねる向きが三橋のトレンドごとに散見されますので、いちいち腐しておきましょう。

質値を目標にせよ?

「いやいや。実質賃金が下がれば、企業の国際競争力(価格競争力)が高まり、国民経済は成長するんだよ」
 と、アメリカの不動産バブルがない状況で、かつての小泉政権期の「輸出主導型成長」を夢見る人たちにより、日本国民は貧困化していくことになります。
 というわけで、上記の動きを食い止めるためにも、国民一人一人がフェーズが変わったことを理解し、
「物価ではなく、実質賃金の目標を定めよ!」
 と、政府に訴えていく必要があると考えるわけです。
http://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-11833993543.html

まず思うのは、金融政策の目標として挙げられるのは「名目値」だということです。
三橋が「実質値を目標にせい」というなら、まず方法を示してもらいましょう。
金融政策で動かせるのは名目値だと思うので、おそらく金融政策以外で実質値を動かすつもりなのでしょう。
財政政策によっても、たとえば三橋らが提唱する国土強靭化は、土建業にはカネが流れ込みますが、国民一般の実質賃金が上がるわけではないので、これもダメ。
給付金を配れば購買力は上がると思いますが、同じ購買力でもこれは「賃金」ではありませんから失格ですし、何より三橋貴明は給付金に反対しています。「配ったからといって消費される保証があるんですかぁ」とか言って。
実質賃金を上げる方法でかろうじて思いつくのは、労働組合の権限を非常に高めて、その要求を企業が拒否できないようにすることですかね。
労組の力が強かった70年代のイギリスでは、労組の要求に従って賃金を上げ続けた結果、スタグフレーションになりました。
賃金を上げるとインフレを煽りますが、高すぎる賃金は同時に失業をも生み出すので、インフレと失業が併存することになったのです。
…あれ?
ダメですね、この案も。
三橋貴明がまさか、スタグフレーションの方向に社会を扇動して安倍政権を打倒しようと陰謀を企てているわけでもないでしょうから、こんな案は論外です。

三の矢に活路があった

金融政策でも財政政策でも実質賃金を上げられないとなると、残るは第三の矢ということになりますが、これはなかなか有望です。
以前にも書きましたが、実質賃金を上げる方法として、「生活必需品の価格を下げる」ことが考えられます。
ゲーム機やテレビの価格を下げても「実質賃金を上げる」ことにはならないでしょうが、毎日かならず消費するモノやサービスなら、その価格を下げることで実質賃金を上げられるといって良いと思います。
その最有力候補はやはり食品ですね。なかんずく農産物。
コメ・コムギ・乳製品・豚肉・牛肉・砂糖の関税を全廃し、コメの減反も廃止すれば、これらの価格は大幅に低下します。これらの農産物は、私たちがほぼ毎日食べているものですから、価格が低下すれば当然のことながら賃金の購買力は上昇します。
とてもいい案でしょ?
え、そんなことしたら農家が潰れるって?
カンゼージシュケンは政治の根幹ですって?
まったく問題ないです。
農家には補助金を直接支払えば持続できますし、その際に生産性の高い農家を優先して補助金を入れれば、自然と農地が集約され、さらに生産性が向上し、私たちの実質賃金も上昇します。
農家に補助金を直接払う政策は、農産物を輸出している先進国なら普通にやっていることなので、日本が踏襲しても不自然なことは一切ありません。
というわけで、「実質賃金を上げろ!」という三橋の問題提起にすばらしい解決策が見つかりました。
今こそ構造改革をすすめ、TPPを締結し、日本国民の生活水準を向上させようではありませんか。
決して一部の既得権益層の生活水準に奉仕するのではなく、ね。