コメンツへの回答【藤井聡】

藤井聡の問題からどんどん逸れて行くけど、まぁええわ。
コメントの全文引用すると読みにくくて仕方ないですけど。

>入札不調
そもそも「入札」は「契約」と異なっている点を確認しましょう。
入札がうまくいかなかった場合、自治体は再入札を行います。
再入札がうまくいけば、無事契約し、そのまま執行することができます。
契約が行われているか否か、という点が公共事業予算が消化されているか否かを判断する点です。
では契約率はどうなのでしょうか。
太田国交大臣はこのように答弁しています。
「実際に、国土交通省の公共事業予算につきましては、十一月末時点で約七〇%が契約済みであり、昨年度同時期を上回る水準で予算の執行がされているところであります。」
つまり昨年度より予算が大きいのに、今年度の方が契約率は上がっているのです。
この事実がある点で「公共事業ブタ積み論」は成り立ちません。

関連するまとめがありましたのでご参照。
公共事業とその供給制約などのメモ - Togetter
予算がでかくなったのに、契約率が大して上がらなければ、執行されない金額は増えますな。金額と率を場合によって使い分けて論をたてる手法はどういう目的か気になりますが。
こんな記事も。

公共事業契約率:宮城に次ぎ低調 入札不調多発裏付け−−今年度前半 /岩手 毎日新聞
 2013年度前半(4〜9月末)の公共事業契約率(金額ベース)について総務省が全国自治体の状況をまとめた。県内の契約率43・7%は宮城県の31・1%に次いで全国で2番目に低かった。東日本大震災の被害が大きい沿岸の市町村ほど低い傾向にあり、人手不足や資材高騰のため、入札への参加業者がないなどで契約が成立しない「入札不調」が多いことが国の調査からも裏付けられた。

これは今日の記事ですが、2013年の前半についての状況が今頃でています。つまり、統計やら調査にはしかるべき時間がかかるということですね。金融政策にまつわる統計についても類推してもらいたいところ。
それにしても、入札への参加業者すらいないなら、需要なんぞ発生しようがありません。ないものは数えられません。

>公共事業の増加にともなって2013年の各四半期成長率は減少しました
2013年の四半期成長率だけで、公共事業が成長率を低下させると言うのは不可能でしょう。
そもそも経済成長率には複数の要因があるのですから、こんな話は通りません。
相関と因果は異なるという点も指摘しておきます。
もし仮に「公共事業が成長率を低下させる」と主張するなら、確実な因果関係の提示をお願いします。

ということは、藤井ら国土強靭派の、「公共事業こそが経済成長させる」という主張にあなたは反対するわけですね?
それはそれで良いと思います。
私も反対ですから。
あなたが「公共事業が経済成長と関わる」という意見を捨てるなら、私も、「公共事業のせいで経済成長率が下がった」という意見を修正しましょう。
ただその場合も、本来なら「需要を増やす」と学者からも見られてきた公共事業を増やしているのに、日本の経済成長率が下がっている謎は残ります。
2013年の各四半期で、最も経済成長率が高かったのは、インフレ目標を採用するという予想によって市場が動き始めた第一四半期であることも厳然たる事実です。

>重武装自立していた大日本帝国という国家は滅びましたね。
「重武装自立が原因で」滅んだわけではありません。
この一文で何が仰りたいのかよく分かりません。

経済とは関係ないですが、ここは面白いところ。私は歴史も好きなので。
私は自分のエントリのなかで、「重武装が原因で大日本帝国が滅んだ」とは書いていませんが、そのように見ても間違っているとは思わないです。
大日本帝国海軍が、「アメリカなんかと戦えるわけないだろ。冗談言うな」と正直に発言できなかったのは、タテマエ上アメリカと戦う場合に備えて予算を獲得してきたからです。正直に言えたのは米内光政くらい?
大日本帝国が滅んだのはアメリカと戦ったからで、もし海軍がヘタレていれば、その方が日本国民にとっては良かったでしょう。

>タダ乗りだから。
不幸にあった方々にタダ乗りさせて何か問題があるのですか?
困った人がいたら助ける、これは当たり前の精神ではありませんか。
特に災害は自己責任では無いのですから、負担は全国民でわかちあうべきです。

それは土建業界に対して行う必要はないです。被災地の人たちに給付金を配っても良いでしょう。そして復興工事は最適な業者がやればいいです。現実には、東北の入札不調が激しくなっていて、その原因が国土強靭化計画にあるのは上に挙げた新聞記事のとおり。

>もともと使う予定だったカネが余っても使わないという国土強靭ワールド
黒田日銀総裁も、個別の価格の下落がデフレの要因の一つになると明言しているのですが
黒田総裁は国土強靭ワールドの方だったのですね。

ここは別の意味で面白い。
国土強靭派の人たちはどうも、「人」に対してくっつく傾向がありますね。
だから発想的に、「リフレ派は黒田総裁マンセーだろう」という前提で書いてくる。黒田総裁の反リフレ的思想を出せばリフレ派が困ると思っている。
私はリフレ支持者であってリフレ派ではないのですけど、黒田総裁の反リフレ思想を出されても全然困りません。
私の過去エントリを検索する気があるなら読んでごらんなさい。黒田総裁のことを私がボロクソに書いている時期がありますよ。
ただ、最近数ヶ月は特に批判する動きがないのでしていません。
黒田総裁が消費増税を擁護する点はダメなんですが、財務省の人だからもう仕方ないです。
ある「人」にくっついて、その人がどんな言動をとろうが支持する、という部分が私にはありません。

>もともと使う予定だったカネを財布の中に無為に余らせて帰宅するということ
金が余った!ラッキーだ貯蓄しよう、株しよう。
こう考えている人がいない保証はどこにもありません。
そもそも「余った金を必ず全て使う」という経済学の理論はありましたっけ。

あなたが言い出した「消費性向」に関わるのですが、あなたの言い分だと、日常使用しているモノゴトの何か一つが価格低下すると、どういうわけか消費性向が下がるというおかしな現象が発生するのです。
これは議論ずみだから蒸し返しませんが、あなたの説明だとその理由が全然分からないですね。
ただ、ここであなたが書いたように、カネを余らせた人が株式を買ってくれたらそれは経済の回復に役立ちます。AKBのCDを買ってもらわなきゃいけないということはありません。

一応、繰り返し聞かせて下さい。
国土強靭派とTPP反対派の定義はなんですか。
定義が無ければただの質の悪いレッテルじゃないんですか。

面白いわぁ。あなたの発想は実に面白い。皮肉ではなく。
自分と全然違う思考様式の人とコミュニケーションするのは大事だと本気で思いました。日常生活ではこんな話する機会ないですからね。もしやったら社会生活できなくなりますし。
「国土強靭化せよ!」と叫びまわる人を「国土強靭派」と呼んだり、「TPPには反対だ!」とがなり続ける人を「TPP反対派」と呼称することをあなたはおかしいと言う。
では何と呼べばいいんですか。
彼らが主張している内容に沿ってくくらないと、どんな文脈でも「藤井さん」「三橋さん」「中野さん」と呼ばなければならず、私がエントリで何を問題にしているのかわからないでしょ?賛成しているのか反対しているのかも伝わりません。
私はリフレーション政策に賛成していますから、他人から「リフレ派」と呼ばれても別に文句はないです。実際にはリフレ派以外の経済学者の書いたものも参考にさせてもらっているので、「リフレ派」という派閥が存在するとしても忠誠心はありませんが。
2ch藤井聡スレッドを読むと、しょっぱなから「リフレ派死ね」と書かれていますが私は平気で読みます。あなたも読むといいですよ。書き込みの質は低いですが、経済記事やエントリへのリンクは役に立ちます。

>シロウトの外国人を入れてどうするの。
普通に聞きたいのですが、日本人とコミュニケーションが取れる技術者の外国人ってどれぐらいいるのですか?
また、どれぐらいの方が「来てくれる」と見込んでいるのでしょうか。
鹿島の社長は、言語力も教育しなければならない点で、むしろ難しいと言っているのですが、
私はこの件について慎重派ですから、賛成派の方がどういう見通しをしているのか伺いたいのですが。

外国人を入れるとしたら、「工事させてすぐ帰す」というわけにも行かないので、年単位でいろいろな仕事をしてもらうということになるんじゃないかと思いますね。「東京オリンピック関連工事の終了まで」とか。
その場合はもちろん、工事の質を担保する責任が日本政府には生じます。ただ、この点に不安があるのは確か。私は日本政府の責任感を信用していません。
だから、一番いいのは国土強靭化計画を放棄して、急がない公共事業をやめることです。

>二度のオイルショックの規模が違うという根拠は?
http://blogs.yahoo.co.jp/futoritaimon/GALLERY/show_image.html?id=52055072&no=0
第一次オイルショックでは3ドルから11.65ドルまで四倍の上昇。
これが価格上昇の引き金となり、そのまま数年間上がり続けています。
第二次オイルショックは79年ですが、これは見れば分かるように短期間で収束し、80年を境にむしろ石油価格は低下していっています。

なるほどね。
しかし先のエントリで私が挙げたとおり、アメリカでは二度ともスタグフレーションになり、二度目の方がインフレ率の高騰が酷いです。
翻って日本では二度目の影響はほとんどありませんでした。
この差は金融政策にあり、当時の日銀はFRBより上手くやったわけです。
インフレもまた貨幣現象なのです。

最後にこの価格と物価の話について念のため伺います
1.物価の動く要因は金融政策のみだ、金融政策でインフレ率を完全に管理できる
2.物価は複数の要因で動くが、金融政策の及ぼす影響が(現代では)最も大きく、金融政策で低インフレに落ち着かせることが可能
この二つの考えの内、私は後者ですが、ここまでの話を見ると、maddercloudさんは前者ということでよろしいですね?

物価の動く要因の根本は貨幣現象です。価格とお間違えなく。
原油価格が高騰してインフレ率が上がることはありますが、オイルショックの例でわかるとおり、金融政策で対応可能です。ただ、「完全」という状態はこの世に存在しません。完全な財政政策がないのと同じ。
老婆心ですが、物価と価格の違いを学ばれることを薦めますよ。
岩田副総裁の著作は歯ごたえがありますが勉強になります。

インフレとデフレ (講談社学術文庫)

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