経常収支赤字が危険信号?では国土強靭化をやめよう!

グローバル経済を学ぶ (ちくま新書)

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経常収支赤字は危険でもなんでもない、ということはまともな経済学者なら何度も繰り返し言っていることなので、甘利大臣もちゃんとした学識のある学者の書いた一般書をお読みになると良いと思います。

経常収支が赤字に転じたら危険信号=甘利経済再生相
ロイター 3月3日(月)16時27分配信
[東京 3日 ロイター] - 甘利明経済再生担当相は3日午後の参議院予算委員会で、経常収支に関して、赤字に転じたら危険信号であり、黒字である方がいいことは間違いないと語った。

しかしまぁ、経常黒字が良いし、その状態を保持したいというのなら、我が国の「貯蓄」を増やせばいいのであって、そのために政府がすぐにできることは、財政支出を削ることであります。
経済学でいう「貯蓄」とは、所得のなかで支出されなかった部分を指します。
民間でも政府でも支出を抑制すれば貯蓄は増え、経常黒字になります。ただ、戦時中じゃあるまいし、政府が民間に向かって「支出を削れ」とは言えませんから、ムダな財政政策を止めるのが近道です。
ムダな財政政策として最近問題になっているのは、土木関係のコストを押し上げて復興や住宅投資の邪魔になっていると顰蹙を買っている、「景気対策公共事業」です。
我が国ではもともと復興関連の事業が喫緊の課題であったのに、供給能力を慮りもせずに土建トライアングルの皆様が「景気対策公共事業」などという、景気をふかすために要らない土木事業をゴリ押ししてしまったために入札不調が相次いでいるとか。
このようなバカげた事態のなか、甘利大臣は、「経常赤字は危険信号だ」と仰っているわけですから、これは引き返すのが合理的選択といえましょう。国土強靭化計画を放棄すれば、土木の供給逼迫も経常収支赤字も和らぐのですから一石二鳥です。
経常収支赤字を気にするのが経済的観点から見て意味のないものであったとしても、ムダな公共事業をやめることには多くの国民的利益が存在しますから、ここは是非賢明な政策決定をしていただきたいところですね。