消費再増税は取引材料だが、実施は確定

「消費再増税の決定を前倒ししろ」と麻生大臣が主張していますが、麻生氏にとっては当然のことです。
まず、10%への消費増税の一部を年金財政の一部にすると決めたのは2009年、麻生政権の時代。
増税は2015年10月の予定ですが、この時期だと2015年9月の自民党総裁選や2016年7月あたりの選挙で駆け引き材料に使われかねません。
安倍首相としては消費再増税をしない、と匂わせることで二つの争いに勝てる材料にできます。
その他のライバル、特に麻生氏からすれば、再増税の時期を二つの争いからなるべく離して影響を少なくし、他の材料を何とか見つけ出して有権者からの支持を取り付けるという戦術を取りたいところでしょう。
第二次麻生政権が誕生したさいに、消費再増税ができていないと突っ込まれないためにも、早めに10%の消費税にしておきたいでしょう。
このように考えると、ほんの僅かでも再増税を防ぐ可能性を持つ安倍首相を支持したくなるものですが、安倍首相を支持するにせよ再増税とは切り離して考える方が良いでしょう。
安倍首相が次の争いに勝っても、多少時期がずれても、消費再増税は必ず実施されます。
そうしないと社会保障のほころびを取り繕うことができないからです。

<消費増税>10%引き上げは来年末までに判断 麻生財務相
毎日新聞 10月8日(火)12時8分配信
 麻生太郎財務相は8日の閣議後の記者会見で、2015年10月に予定される消費税率の8%から10%への引き上げの判断時期について「(消費増税で)2%の税収が上がるか上がらないかで歳入が変わるので、来年12月までに決めてもらわないと予算編成が極めて難しいものになる」と述べ、来年末には最終判断するとの見通しを示した。各年度の予算は、通例では翌年度の税収見込みなどを判断し、前年の12月末には閣議決定している。
 これまで10%への税率引き上げの最終判断は、8%のときと同様に半年前の15年4月ごろとみられていた。麻生氏は、消費税を10%に引き上げる理由について「当面10%というのを決めた背景には、毎年1兆円ずつ伸びている社会保障関係の歳出の急激な伸びがある」と述べた。【葛西大博】

ぜ消費税なのか

税にもいろいろありますが、その中でも最悪の消費税が選択されるのはなぜなのか推測してみましょう。
今の社会保障制度が保たないことを政治家や官僚は認識している筈です。
にも関わらず、安倍首相ですら早々に、「制度は変えません」と言い切り、結局消費税も上げました。
今の社会保障制度の実質的破綻が明らかであるにもかかわらず、改革の意思をもたず、国民生活にとっては最悪の消費税を財源とする理由は、社会保障財政のどんぶり勘定が政治家・官僚・業界の利権になっているからであり、そこで貯めた財産が将来の破綻の時期に活かされるためには、貧乏人*1や若者*2に負担を押し付ける消費税を選択しなければならないのです。
所得税相続税のように、所得や財産の多い人に大きく課税される公平度の高い制度にしてしまうと、自分たちがせっかく貯めこんだ財産を貧乏人どもに分けてやらなくてはならなくなりますから、彼らの目標達成ができないのです。
社会の上層を占める人々は、日本がこのまま進むと数十年後から100年後以降にかけて、非常な衰退と混乱をむかえることを予期していますが、今の制度を変えてしまうと自分たちが儲けることができなくなるため、破綻を招来するシステムでも絶対に改変したくないわけです。
以前にも書いたのですが、今から10年たつと、若者二人で一人の老人の費用を負担しなければならなくなり、60年たつと若者一人で一人の老人を支えなければならなくなります。
今の制度のままでは。
そしてその状態が100年たっても継続されてしまいます。
猛烈な少子高齢社会において悲惨な事態を発生させないようにするためには、一層の、しかし或る程度の負担増と、受益者がもっと負担すること、そして所得や財産に或る程度応じた負担の仕組みに変えることが必要で、現在のように大量の人間が誰でも同じように安い費用でいくらでも社会保障を利用するようにしていては、保つはずがないのです。


社会保障制度改革への拒否、消費増税という組み合わせは、「将来の破綻を放置、金持ち優遇、官僚と蜜月」という意味をあらわす行為です。
許されないことですが、誰がやっても同じことになるという日本政治の現状を考えると、国民の未来はすでに詰んでいます。

*1:逆進性。同じ消費活動をすると、財産にしめる消費税の重みが、貧乏人の方に重くかかる

*2:若者たちはさまざまな負担をしながら現在の消費税も払い、引退したときには更に上がっている消費税を払う