増税の悪影響を相殺できるか?

サムナー教授は少し前まで、「消費増税はやめとけ」という意見でしたが、日本の財政状況を見て意見が変わったようです。
TheMoneyIllusion » Japan is coasting on its success
私はサムナー教授の意見には反対でして、消費増税は延期するべきだと思います。
消費増税の悪影響を金融政策で相殺する、という考え方には疑問があって、イギリスはそれに近いことをやっていたように見えるのですが、うまくいきませんでしたね。
消費増税を1〜2年延期するだけで、財政状況にそれほどの悪影響が出るとも思えませんし、黒田総裁が消費増税を肯定する発言をしたことによって円高と株安を招いたことを考え合わせると、実際に消費増税が決定した場合には資産市場の悪化はいっそう酷いものになると思います。
また、黒田日銀は、270兆円のマネタリーベースによって2%インフレ目標達成ができると大見得をきってしまいましたから、その予定を変更して更なる量的緩和をすることはないでしょう。そんなことをしたら体面が失われてしまいます。
体面を失うことを黒田氏が嫌がるというのは、世間が体面を失った者への評価を非常に低めることと表裏一体であり、これは文化的な問題です。合理的に捉えるものではありません。
サムナー教授は日本人の心性、特に官僚の性向をご存知ないようです。
知っていたら、「いっそうのQEをやれば何とかなるぞ!」などという考えは出てきません。*1
この間の日銀決定会合の会見で黒田氏は、「異次元緩和を決定したときから消費増税も織り込んでいた」と後出しジャンケンをしていたくらいですから、これは「追加の金融緩和はしない」という予防線です。
緊縮財政を金融政策で相殺することは出来るかもしれず、実際にアメリカでは「財政の崖」など存在しなかったという見方も可能な状況ですけれども、今の日本においては消費増税を延期するのが最も穏健で妥当な方法です。
サムナー教授は日中戦争や太平洋戦争の本でも読んで、日本人の文化的な精神病理について知識を得ると、適切な意見が書けるだろうと思います。

*1:より強力な金融政策をするべきであるとは思いますが