トリクルダウンとリフレーションは無関係です
言葉遣いというのは大事で、本来の使われ方と違う使い方を発明して論を展開してしまうと、誤解を招くことになるので注意が必要です。
トリクルダウン説というのは政治思想であって経済理論ではありません。
富裕層や大企業を優遇するためのレトリック、悪く言えば屁理屈なのであって、経済効果の波及ルートには当初から疑問を持たれていて、事後にも確認されなかった代物です。
トリクルダウン理論 - Wikipedia
一方でリフレーション政策の経済効果の波及ルートは実証的に論じられたものであり、現在、実際に理論どおりの展開がみられています。
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岩田副総裁のスタイルは、決して単に理屈をこね回すのではなく、必ず実証を伴うことです。そしてその証拠は、誰にでも明らかに参照できるデータを用いています。
波及ルートを全てトリクルダウンというのは言い過ぎ
資本主義とトリクルダウン理論について - カンタンな答 - 難しい問題には常に簡単な、しかし間違った答が存在する
このエントリには以下のような問題点があります。
- 「リフレ政策が長期的リスクを高める」と断じているが、どのようなリスクか明らかにしていない
- リフレ政策で恩恵を受けるのは「一部企業」としているが、範囲を明らかにしていない
- 「リフレ政策の波及ルートはトリクルダウンだ」としているが、「トリクルダウン無しには持続的効果がない」と言っている。つまりトリクルダウンで持続的効果がある、ということなのだから、トリクルダウンで結構なのではないか?
- 「リフレ政策に富の再分配メカニズムがない」と断じているが、失業者が減るのは再分配にならないのだろうか?
- 「リフレが浸透しさえすれば国民全体が豊かになる」とは誰の主張か明らかにしていない
- リフレーションに再分配メカニズムがない、という論難と、アベノミクスに再分配メカニズムがない、という論難を混ぜている。リフレーションはアベノミクスそのものではない
- 「ITバブル崩壊からリーマンショックに至る米国経済の経緯を辿らない為の「何か」が日本のリフレ政策(或いはアベノミクス)に見当たらない以上、同じことを繰り返すのではないかという懸念は払しょくされない」とのことで、懸念を持つのは自由だが、リフレーションでバブルにつながるという根拠を明らかにしていない
- 「グリーンスパンの金融緩和政策で格差が拡大した」としているが、金融緩和政策と格差拡大のつながりを明らかにしていない。アメリカでも金融緩和していない時期はあったが、その時期には格差が小さかったのだろうか?