サムナー教授によるアベノミクス現状評価

のところまずまず良いが、まだ足りないね」
TheMoneyIllusion » Japan: So far so good, but not enough

日本の新しい金融刺激が成功かどうかを判断する際、少なくとも3つの基準がある。

  1. それは名目GDP成長期待を後押ししたか?
  2. 2%の予想インフレ率を達成したか?
  3. 流動性の罠から抜け出すに足りたか?

サムナー教授は名目GDP目標の唱道者です。

初の基準に関して、これは既に成功した。金融刺激が数ヶ月で資産価格を5割も押し上げて、それが名目GDP成長期待を押し上げるのに失敗するというモデルは存在しない。だから、既に成功したのだ。

名目GDPが伸びるでしょうという期待が上がるということは、インフレ率だけでなく、(実際の産出=実体経済)も伸びるということですね。
「物価だけ上がり、実体経済は伸びない」という人が日本にはわりと存在しますが、「そんなの有り得ないよ」という意味です。

2番めの基準については、以下を考えなくてはならない。

【ロイター】
日銀は2%のインフレ目標を2年で達成するのに必要なすべての方策をとり、大規模な国債買い入れによる市場の混乱を最小限に止めると黒田日銀総裁は述べた。
黒田総裁は、日銀がインフレ目標を達成できるかどうか疑わしいとか計画より達成には長くかかるとかいう人がいるが、日銀は必要な限り新しい政策枠組みを維持していくだろうと述べた。
2%のインフレ目標を2年で達成するのに必要な全ての方策をとったが、私たちの政策を2年に限定するのは適切ではないと黒田総裁は述べた。

あいにくにも日本には消費者物価指数の適切な先物市場が無いが、日銀が充分にやったとは私には思われない。確かに黒田総裁はそれを理解していると思うし、それが2年以上に政策を伸ばしている理由なのだ。他方、彼らはインフレだけでなく実質GDP成長でも成功かどうかを定義付けているようで、名目GDP目標への肯定を暗示している。これは良い。しかし、それを明らかにするなら、もっと良い。

さすがサムナー教授、「まだ足りない」とおっしゃっています。
このへんが個人的に大変興味深いところで、FRBリーマン・ショック以降に貨幣量を3.5倍にしているようで、これは日本人から見ると仰天するような事態なのですが、アメリカの回復への足取りは確かに遅々としています。
サムナー教授はFRBの政策についても「足りない」とおっしゃっていますから、今回の黒田岩田砲についても同じ考えのようです。
名目GDP目標については、岩田副総裁が「検討に値するが、速報性が問題である」とおっしゃっていましたね。
サムナー教授は速報性の問題への対処も書いていたような記憶がありますが、現在の私の理解力では分からないので言及はしません。
ただ、岩田副総裁は「デフレと超円高」の中で、伸縮的インフレ目標を採用する目的として、「名目GDPを4〜5%に維持すること」を挙げているので、考え方は近いと思います。
平たく言えば、インフレ率だけを見ているわけではないということです。このへん、インフレ率だけを「問題視」するのがデフレ派の常套手段であり、今もマスコミで盛んにやっていますから、注意が必要です。

3つめの目標は、最も達成されそうにない。ゴールドマン・サックスの予想は楽観的だが。
ゴールドマン・サックスの記事は省略。要は「日本の株式はこれから儲かるよん♪」という内容。】
しかし、日本の長期国債金利は非常に低い。予見できる未来に、日本がゼロ金利制約を脱しそうな気配が私には見えない。
だが、名目GDP成長期待がより速いことが最も重要な目的であり、その非常に重要な努力において、いくらかの成功を日本が既におさめたことは疑いない。
何が効くのか、について私が態度を明確にしたことがないという批判をするコメントがある。OK、円は76円から99円に下がった。もし日銀が125円まで下げたら、インフレ側におそらく行けるだろう。140円まで下げたら、ほぼ確実に行けるだろう。2007年という近年に120円だったことを思い起こそう。
日銀は必要なことを知っている。
それをやるかどうかだ。

ここも興味深いです。大胆な提言がサムナー教授の面白いところ。
円が125円〜140円だなんて、金融刺激賛成派の私もビビります。アメリカの反応がアレでしょ。
正確にはアメリカの一部業界の圧力が恐ろしいということですけれども。
浜田宏一教授は、「円は100円台で良いし、110円になったら問題」とおっしゃっていて、100円台でデフレ脱却できればそれに越したことはありません。各方面からの非難を最小限にできますから。
岩田副総裁はこのあたりについて、「2%インフレ目標達成時の為替レートが適正レート」といった発言をされていたと記憶していますから、日本リフレ派の間でも違いはあるようです。