FRBより先んじていた筈の日銀が言い訳

言い訳はいつものことなんだけど。

日銀総裁国債買い入れの副作用指摘、「市場の依存度高める」
2012年 06月 19日 16:28
[東京 19日 ロイター] 日銀の白川方明総裁は19日午後の参院財政金融委員会で、中央銀行による積極的な国債買い入れについて、国債市場での中銀の存在が大きくなり、中銀への依存度を高めてしまう、と副作用に言及した。西田昌司委員(自民)の質問に答えた。

この辺も微妙に詭弁なんですが、『日銀は国債を買え』と言われているのは財政を支えろということではなくて、『金融緩和せよ』という意味で言われているんですね。しかも「直接引き受けろ」とだけ言われているわけでもありません。*1
それをあたかも財政赤字を日銀に尻拭いさせているかのように訴えるところにウソが入っています。
国債を買うのがそんなに嫌なら別の資産でもいいと思いますが、実際には直接引受さえも日銀は毎年行なっているのです。

日銀は、市場からの国債買い入れについて、1)成長通貨の供給、2)長めの金利の低下を促す──2つの目的で実施している。前者は従来から国債買い切りオペとして実施しているもので、毎月1.8兆円を購入。後者はリスク性資産も購入する資産買入基金で実施しており、基金では長期国債の残高を今年12月末までに24兆円、来年6月末までに29兆円に積み上げる計画。こうした日銀による積極的な国債買い入れもあり、国債市場では金利が大きく低下している。

不景気で資金需要が低いという面からも金利は低下します。例えば銀行が『企業にカネを貸しても、不景気だから返済されないかもしれない』と考えて国債で資金を運用することを選べば、金利は下がってしまいます。
ですから、「低金利が金融緩和している証拠」という日銀の言い分はウソなんですね。「間違い」でなく「ウソ」だというのは、そのくらいのことはいくら日銀でも承知しているに決まっているからです。

また、総裁は、日本経済のデフレからの脱却と物価安定の下での持続的な成長軌道への復帰が、日銀にとって極めて大切な課題と強調。

つまりデフレは金融政策で脱却するべきだと言っているわけですね。これは真っ当な意見だと思いますが、金融政策の当事者なんですから、本来は常識なんですね。デフレが貨幣的現象でないとか言ってのける政治家や『識者』が数多く存在していて、そんな変な意見がマスメディアに堂々と載ってしまうあたりが、日本の後進性を示しています。

日銀は「中長期的な物価安定の目途」として消費者物価の前年比上昇率1%をめざして金融緩和を進めているが、2%などもっと高い目標を掲げるべきとの指摘も少なくない。総裁は「もう少し高い数字がいい、との議論があることは承知している」しながら、バブル経済当時も物価上昇率は極めて低い水準だったとし、「日銀が突然、2(%)という数字を出しても、直ちに達成できるわけではない」と語った。 (ロイターニュース 伊藤純夫)

2%のインフレ率をただちに達成できるわけではない、という見方そのものはそのとおりだと思います。というか、他の諸国もリーマン・ショックの後の時期には、デフレに陥らないように四苦八苦したのです。
しかし、2%に近いインフレ率をなんとか達成している国や地域はアメリカを始めとして実在するのです。つまり不可能事ではないことが事実によって証明されています。
日本だけがいつまでもデフレ状況であると言う点が『異常だ』と言われているのはそういった事情によります。
ただちにインフレ率を上げることが難しいということと、目標を2%にしないということとは結びつきません。
目標は最低でも2%にしてアメリカと合わせ、インフレ率の差によって円高になることを防ぐべきでしょう。
また、デフレから脱却するためにブーストするべきことを考慮すれば、目標は当面は4%にでもするべきだと思います。

*1:現在許されている枠内で引き受けても良いと思いますが