自分の世界観に合うように世界を歪めたい。

世界に自分を合わせる、自分に合うように世界に働きかける、というのは両方あることだと思う。どっちに傾くかはその人の性格次第なのでどっちが良い悪いということでもないのかもしれない。
世界に自分を合わせるという方針は大多数の人間が自然に実行している方法で、言い換えるなら平凡な人生。
自分に合うように世界に働きかけるという方針は成功したなら非常に非凡な少数者となる方法だ。
非常に非凡な少数者になりたいという願望はよくあることなのだろうから理解できなくはないのだが、大抵の場合は非凡でありたい凡人であることが受け入れられずに変になっていく人が多い。これはどのジャンルでもそう。非凡な人間は生まれつき非凡なので努力で非凡な存在になることはできない。その事実をネガティブに捉える人は変になるし、普通だと思う人は正気を保てる。この辺はオウム事件参照。
非常に非凡な少数者になりたいワナビーがいるという現象において問題になるのは「その人が変になる」ということだけではない。もし本当に非常に非凡な少数者になってしまったとしてもそれはポジティブな性格のものとは限らないからだ。
世界に働きかけて自分に合うように変えてしまった非常に非凡な少数者の中で、世界に破壊的なダメージを与えた例としてはレーニン毛沢東による社会主義革命がある。レーニン毛沢東も個人としてみた場合、異能者であることは確かなのだが彼らが成功してしまった結果、周囲の数百万〜数千万の人間が命を落とすことになった。
レーニン毛沢東が「でかいことをやりたい。世界を自分の好みに合うように変えてしまいたい。」と野望を抱くのは彼ら自身にとっては「生まれてきた甲斐」だったのだろうが、周囲の人間にとっては彼らが平凡であってくれた方が良かった。

デマッター

Twitterは最近では「デマッター」と呼ばれるくらいにいい加減な情報を血眼になって垂れ流す人々が何故か集合している場所なのだが、どうも上記のように「非常に非凡な」ことをやりたい、自分たちの世界観に合うように世界を変えたいと願望している人が多いのではないかと思う。
世界を変えたいと思うこと自体はある程度自然な感情だと思うし、自分がブログを書く理由にも少なからずそれは有る訳だが、自分が非常に違和感を感じるのはTwitter民が背伸びし過ぎているという点だ。彼らがよく知りもしないこと、理解できていないこと、正しいかどうか確かめていないことを我先に拡散したがる様子には、非凡な存在でありたいという気持ちが強すぎてダークサイドに落ちているという観がある。
この点は2ちゃんねらーも似ているのではあるが、2ちゃんねらーの方がまともな意見を言う人間が多い。TPP騒動の際にTwitterを検索したときにはほとんど全員が反TPP&反米妄想にかられていたのが観察され、2ちゃんねるでもかなり同じような様子ではあったのだが、それでも中には流れを中和するような意見を吐ける人間がいた。
この理由について一つ思うのは、Twitterは基本的に独り言のためのメディアだが2ちゃんねるは一応はコミュニケーションのためのメディアだということである。品はないが。
非凡でありたい上に独り言を言いたい人間と、非凡でありたいがコミュニケーションはする人間の違いが「主張する前に自分なりに確かめてみる」という作業を幾分かは発生させているのではないかと推測している。

反米の何がそんなに意義深いのか。

右翼左翼問わず、日本にはどういうわけか反米に命を燃やす人々がいる。同盟国だっちゅーに。
右翼は軍事を肯定するが、肯定しているが故に太平洋戦争での経緯が今だに気に食わないらしい。
左翼は軍事を否定しているので、日本がアメリカと軍事同盟を結んでいるのが気に食わないのだろう。
右翼左翼に共通する主張は結局「同盟を解消しろ」ということだろう。
日本では右翼左翼が正反対の立場のように見えながら実は手を組んでいるという事象は過去にもあった。戦前の右翼左翼で共通していたのは「反資本主義」であり「反欧米」であり「戦争による世界秩序と国内秩序の変革」であった。何回でも強調するが戦前の社会主義者戦争賛成であった。根拠が知りたい人にはちゃんとした参考書を教えます。
今の右翼左翼は戦争については意見が違うが、「反新自由主義」・「反米」という点では共通しているので、戦前の右翼左翼とかなり似通った生態を示している。
彼らの世界観では根拠が異なるとはいえ「アメリカは道徳的にけしからん」ということで「アメリカと組むな」と言っているわけだが、もう一点共通しているのは「反論に耳を貸さない」ということだ。
アメリカが軍事的に経済的に道義に反していると彼らは主張するけれども、「では道義的に正しい国はどこか?」と言われた場合にまともに答えられない。右翼なら「日本」と言ってしまうし左翼なら「中国」とか「韓国」とか「北朝鮮」とか言う訳である。当然ながらこれらの返答には歴史的事実に根ざした反論が簡単にできる。しかし耳を貸さないのである。
彼らの軍事・経済・歴史に関する認識に対する反例がいくらでも挙がってくる現実があるのに、彼らはその現実自体を認めようとしない。これは推測に過ぎないが、もともと「自分の世界観に合うように世界を変えたい」という望みをもっている人々であるが故に、自分たちの世界観に合わない現実を無視する傾向があるのではないかと思う。現実がそこにあるのを認めてしまうと彼らの世界観と自我が保てないのかもしれない。自分の認識能力を自分で歪めて自分を守っているのだろう。
どうせ聞きゃしないが自分が右翼左翼に言いたいことは「軍事・歴史・経済は善悪を持ち込むべきものでない。」ということ。もともとそういうものではない。善悪は必要に応じて設定するものだが、軍事・歴史・経済は全部をコントロールできるものではない。自分の意志だけで管理できるものではない。
軍事について「こちらが平和主義なら戦争を避けられる」と主張する左翼は多いが、この意見への歴史的反例は存在する。求められれば即座に挙げられる。また卑近な例から連想してもすぐにわかる。
歴史について「次に何が起こるか道徳的にコントロールできる」筈がない。これは当然なので説明不要。
経済については「コントロールできる」という妄想が社会主義共産主義という形で存在したが、尽く失敗したことによって確かめられた。ついでに言うなら社会主義国でも道徳の退廃は至る所に存在したが、常識的に考えれば当たり前。
つまり日本がアメリカと同盟を組んでいることについて道徳的に反対するのは的はずれだということだ。
日米同盟が存在する意義は「それが有利だから」というだけ。道徳的に論じる対象ではない。(同盟に賛成する人の中には「日米安保は道徳的に正しく、友情の証」という人もいるだろうが…)
こういっても納得しない人はしないので相変わらず理性のかけらもない大声を上げ続けるだろうが、日本の1700年の歴史の中で、もっとも豊かで安定して平和だったのは日米安保条約を結んでからの60年間である。右翼左翼が何をいうのも自由主義社会では仕方ないが、あなた方の安穏として経済的な不安の少ない娯楽も多い生活は日米同盟に支えられているということは指摘しておく。それを忸怩たる思いで噛み締めると良いと思う。

無教養+アジア主義

「欧米の覇道にアジアが連帯して立ち向かう」という構図は孫文のような二枚舌野郎が盛んに叫んでいた綺麗事で、何の有用性もないプロパガンダである。日本ではアジア主義を主張して日本人の同情を引いておきながら海外の新聞では日英同盟に反対して日本の力を削ぐことに傾注していた孫文に衣食住や女まであてがってやっていた日本人は本当にお人よしだと思う。情に流されるのは全然美徳ではない。
今でも情に流されるばかりで何の裏付けも取らずにアジア主義的発想でとにかく反米に役立つ情報なら何でもバラ撒くという人間がネット上に数多く存在するわけだが、昨今特に注目されている経済分野での反米活動をくさしておく。

  • 韓米FTAをまだ「アメリカの横暴」とか決め付ける人間がいるが、このFTA李明博政権だけでなく反米で知られた盧武鉉政権も進めていたもの。盧武鉉がどれくらいアメリカから嫌われていたかは少しはググッてみたら良い。事実を見たくない人には言っても無駄だが。
  • FRBが金融緩和をしているのはデフレ回避のため。ドル安誘導で貿易を有利にするとか関係ない。アメリカにとって韓国の輸出に占める割合はたった3%しかない。
  • 国内の農家や労働者を保護することが常に経済的に有利とは限らない。例えば日本ではコメについて保護しているために高いコメを消費者が買わされている。日本のコメの価格維持法はカルテルなので普通なら認められない。
  • 金融緩和が為替操作というのなら、韓国もイギリスもスイスもスウェーデンもユーロも全部該当する。為替操作の定義をちゃんと調べて書いたのか?金融政策は韓国に学べ イングランド銀行による量的緩和の解説
  • 恐慌が起こる危機に対して金融政策と財政政策を併用する方法は日本以外では常識。特にFRBの今の議長は世界恐慌の研究をしていたのだから金融政策を行うのは当たり前。日本でも高橋是清という偉大な先例がある。財政政策が難しいから金融政策をするわけではない。財政政策があれば金融緩和が要らないという説が本当なら、アメリカ以外の国々が金融緩和している事実をどう説明するのか。特に韓国について説明せよ。言っとくが韓国はインフレターゲット採用国だからな。
  • 財政赤字削減がどうして社会保障破壊に直結するねん。別に公務員の数や給料を減らしたって赤字削減になるだろ。問題は中身だろ常考
  • 赤字削減原理主義が間違いなのは本当。財政による景気刺激はするべきだが、それでも金融緩和は必要。金融緩和の重要性は予想の形成。金融緩和⇒物価上昇の予想⇒予想実質金利の低下⇒通貨安⇒設備投資、住宅投資、輸出の増加⇒景気への好刺激。

こういう問題について発言する前に新書レベルの読書はするべき。新書レベルでもそう簡単に頭に入る問題ではない。だからこそプロパガンダの方が一般に流布しやすい。
難しいから面倒だから安易な方向に流れていい加減な説を垂れ流すのは愛郷者たる自分には許し難いので遠慮なく批判する。情に流れるのは単に自我が脆弱なだけで、人間的である証拠ではない。