【TPP】対中国シフト

TPP交渉参加表明を一日延期したとかでドジョウ総理がヘタレそうになっているようですが、私は相変わらず「TPPに参加するべきかどうかはよくわからない。」という立場なんですけれども、「交渉にすら参加するな!」という意見があまりにも奇異なので引き続きウォッチと考察を続けています。
現在のTPP反対運動の奇妙さは申し合わせたように具体論を避けることです。彼らはTPP賛成意見を単に否定するか馬鹿にするかという印象付けに徹していて、その様子には統一感すら伺えます。
人間が自発的に動く場合、あたかも歩道を行く歩行者のように斉一性が見られないのが通常ですから、今回のTPP反対運動にはどうも不自然さがつきまといます。不自然さといえば、TPP反対を叫ぶ人々が妙に切迫した表情で何かに追われているようなのも気懸かりです。
さて、「TPPは対中国包囲網」という意見があるようで、反対派は「アメリカは中国とよろしくやっていくと言っているのだから、それはありえない。」と否定しています。TPPを対中国包囲網であるとネット上の強硬派が主張している例はあると思うのですが、きちんとした論ではそこまで強く言っているものを見たことがありません。
「お前の国を敵対的に封じ込めるぞ」なんてことは常識的に考えて言う筈がないのであって、もしそんなことを核兵器がない時代に表明したら戦争になってしまいます。日本は実際そうなったわけで。
また、屁理屈を言わせてもらえば、「環太平洋」では中国を包囲することはできません。
今発売されている日経ビジネスには「TPP亡国論のウソ」という興味ふかい記事が掲載されていますが、そこでは大体次のような論が展開されています。

  • TPPに対して中国やEUが反応している。
  • EUは日本とのFTA交渉に来年にも入る姿勢を示し始めた。
  • 中国はASEAN+3(東南アジア+日中韓)の自由貿易交渉枠組みの他、日本が主張してきたASEAN+6(東南アジア+日中韓+豪州、ニュージーランド、インド)の自由貿易交渉枠組みにも乗ってきた。
  • 中国としてはASEAN+3か、日中韓FTAの枠組みで自由貿易圏を造りたい。これなら中国が主導権をとれる。
  • アジア太平洋地域には将来、アジア太平洋自由貿易圏を構築する構想がある。その中核にくるのが中国主導の枠組みなのか、アメリカ主導の枠組みなのか、という綱引きがある。
  • ASEAN+3やASEAN+6はまだ交渉が始まっていない。TPPは始まっている。
  • つまり、将来のアジア太平洋自由貿易圏の中核にくる最有力候補はTPPである。
  • TPPに日本が参加することは、将来のアジア太平洋自由貿易圏におけるルール作りに日本が参加する、或いは主導国になる可能性を意味する。

日経ビジネスの記事の趣旨はこんなところです。
私見を付け加えると、TPPでアジア太平洋自由貿易圏のルールをアメリカ主導で作ってそこに中国を参加させれば、日米のルールを中国に飲ませることができるわけで、敵対などしなくても貿易しながら穏便に影響力を行使できます。日本が将来、アメリカの影響力が薄れたアジアで中華帝国の地方政権にならないためにもよく考えるべき問題と言えましょう。今の日本の内政の調子だと10年以内に深刻な危機が訪れると警告する識者、学者は複数存在しますから尚更です。