アメリカの雇用対策はちゃんとできるか?

雇用対策案が発表されました。

景気・雇用対策、35兆円=減税、インフラ投資が柱―米大統領
時事通信 9月9日(金)9時54分配信
 【ワシントン時事】オバマ米大統領は8日夜(日本時間9日午前)、米上下両院合同会議で演説し、社会保障税の減税拡大や道路、橋などのインフラ投資を柱とした景気・雇用対策を発表した。対策の規模は4470億ドル(約34兆6000億円)。大統領は「国家的な危機に直面し、政治的見せ物を終わりにできるか問われている」と述べ、関連法案の迅速な議会通過へ民主、共和両党の協力を要請した。


 大統領が年初の一般教書演説以外で、両院合同会議で演説するのは極めて異例。失業率が9%超に高止まりする厳しい雇用情勢を受け、国民の不満はかつてないほど高まっている。来年11月の再選に向けて暗雲が立ちこめる大統領にとって、今回の演説は国民の支持を取り戻せるかどうかの試金石となる。


 対策の柱は12月末で期限切れとなる社会保障税の減税拡大。減税延長とともに、対象を従業員だけでなく中小規模の雇用主にも拡大、既に6.2%から4.2%に引き下げられている税率を、3.1%まで半減する。対策全体の減税規模は2400億ドル超。また、道路や橋の整備、学校の近代化など1400億ドル規模のインフラ投資も盛り込んだ。このほか、失業保険給付の延長なども手当てした。


 大統領はこのほか、低迷する住宅市場対策へ住宅ローンの借り換え支援を表明。韓国やパナマ、コロンビアとの自由貿易協定(FTA)の早期批准にも意欲を示した。

問題は議会で通るかどうか…
http://econdays.net/?p=4859
結構厳しいかもしれないですね。私は別に共和党に反対じゃないですが(外国の政党に反対する理由がないし、共和党親日的と言われますし。)、この問題はアメリカだけではなくて政党政治をやっている所ではよく起こる問題ですよね。根本的な問題。もし「公」のために皆が協力し合うと物事が上手くいってしまい、次の選挙で野党が負けてしまうという。民主政治での世論の質の問題です。もし選挙民が「おお、共和党が公の利益のために協力したぞ。これを評価して勝たせよう。」となるなら問題ないですが、そうはならないのが普通だから常識的な戦術としては少しでも失点を狙おうということになってしまいます。
日本でも野党時代の日本民主党が散々に自民党を攻撃していましたが、その当時言っていた提案をほとんど実現できていませんね。今では脱官僚天下り規制もグダグダ。しかしやはり根本的に問題なのは国民がそれを問題にしないことです。民主党が野党時代に言っていたことを把握していないから批判が出ないのでして、それはつまり選挙で勝たせた時にも民主党の言い分をよく読んでいなかったのです。TVコマーシャルで調子のよいことを言っているのを見て(『負担が減って給付が増える』とか。)、夢のような話を盲信して勝たせてしまって今この体たらくなのです。
古くは統帥権干犯問題が有名で、軍縮条約を結んできた政府を軍人と野党が組んで攻撃して首相は暗殺、統帥権にまつわる物事をタブー化してしまい、そこからの軍国化に力を与える結果になりました。犬養毅はこの時、鳩山一郎と共に政府を攻撃しましたが、のちに自分自身が軍人に殺られてしまいました。まあその時の浜口雄幸内閣は経済政策では大失敗をやらかして昭和恐慌を招いてしまいましたから、それへの国民の不満の方が命取りだったのかもしれず、必ずしも国民が統帥権問題を煽る声にのったのでもないかもしれませんが。高橋是清の登場はその後。
今度のアメリカの雇用対策案問題は政党政治につきものの問題がどういう展開を見せるか非常に興味深いです。今の状況はアメリカにとって歴史的な危機と言えるわけで(欧州も超ヤバいようですね。日本であまり報道されないのはヤバすぎるからか?金融危機や世界同時不況の再来になるか…)、それにどういう対応がなされるかが注目。中国が台頭している今日、アメリカの体力がへたってしまうとアジアでの存在感にも影響を与えますから、日本が直面している領土問題、アジアでの地域覇権がどうなるかという問題にも直結してしまうのではないかと懸念されますし。
政党政治のセオリー通りになってしまうのか、意外なほど合理的・理性的・賢明な対処がなされるのか(アメリカ国民がそれを評価することを願いますが…)、関心をひかれます。