ユーロ圏危機

まず銀行の資本増強を ユーロ危機 専門家に聞く
UBSシニアエコノミックアドバイザー ジョージ・マグナス氏
2011/9/5付
 ――欧州景気が二番底に陥る懸念もあります。


 「今後半年以内に欧州が景気後退に陥るかどうかは五分五分とみている。欧米では、経済の長期停滞という『日本化』を懸念する声があるが、政策でも日本と同じ間違いをする恐れがある」


 「日本が1997年に景気回復がはっきりしないうちに消費税率を上げたように、ドイツのように財政危機にひんしていない国まで財政緊縮に動いている。『余裕のある国は景気刺激策をとる』といった20カ国・地域(G20)レベルの合意が必要だ。財政緊縮だけでは政府債務危機を脱することはできない。雇用回復も重要だが、欧州も米国もそれに手を付けていない」


<聞き手から>複合危機の対処、当局者動き鈍く


 長年、世界経済を見つめ続けたベテラン・エコノミストの目には、欧州には「2つの危機」があると映る。政府債務と金融システムの複合危機だ。マグナス氏はまず金融システム安定のための銀行の資本増強を訴えるが、今のところユーロ圏当局者の動きは鈍い。


 政府債務危機に対応して、各国が相次いで財政引き締めに動いていることについても、バブル崩壊後の日本の経験を引き合いに警鐘を鳴らす。雇用回復策の重要性を訴えるが、世界経済の見通しについては「楽観的になれない」と言う。 (ロンドン=編集委員 藤井彰夫)