東電は破綻させるべき。政府案は不当。

「原子力損害賠償」政府案ではモラルダウンと混乱を引き起こす。東電処理は会社更生法を適用せよ(福井 秀夫) | 現代ビジネス | 講談社(1/4)

  • 東電の責任を追及しないのは無理。過去に津波が来た記録があるし、電源対策も適度な費用で出来たから。
  • 原賠法16条には、決して「東電の負担を減らす、東電を潰さない」という意味はない。
  • 国が東電を監督していたとしても、決して、国の責任=納税者が賠償を負担する、という意味ではない。国が監督することで国が責任を負うなら、東電は原発に対してますます無責任になる。
  • もし「国が原発推進をしたから事故の責任も東電でなく国が負う。」というロジックが成り立つなら「モータリゼーションは国が推進したのだから交通事故の損害は国が負担する。」というロジックも成り立つことになる。それはおかしい。
  • そもそも、原賠法上は責任の帰結はハッキリしている。東電に責任があるなら東電のみが賠償責任を負う。国が賠償責任を負うとしたら、公務員が故意に安全管理を邪魔した場合に限られる。今回、それはない。
  • 原賠法上、すべての賠償責任を負うか一切負わないかのどちらか。「東電にも国にも責任がある。」といった半端な解釈はない。国が監督していたかどうかは無関係。
  • 6月14日の政府案は、東電の温存と東電の株主・債権者を保護するのが前提になっている。
  • 政府案では、電気料金で賠償金をまかなうので、増税国債発行をする必要がなく、政府が矢面から逃げることが可能になっている。
  • 政府案は銀行や大企業を守り、国民に負担をおしつける。国民は電力会社を選ぶことが出来ないにもかかわらず。
  • 政府案にある「相互扶助」とは聞こえはいいが、事故が発生した後で無関係な人の負担を強いる点が不当。
  • 政府案は「株式市場において、良い企業に投資し、悪い企業に投資しない。」という働きを阻害する。
  • 政府案には「後から破綻処理が可能。」とあるが、閣議決定では「東電を破綻させない。」と言っており、矛盾している。
  • 政府案に従い「後から破綻処理」する場合に、公的資金注入後に破綻させるようなことがあると、その注入分だけ社債権者や銀行などの債権者が得をする。つまり無関係な国民の税金を受け取るようなもの。
  • 会社更生法を使ったとしても、被災者救済には問題ない。賠償は必ずしも後回しにならない。しかも国が援助するのだから。政府案の方が社債権者の損を補填するので、被災者救済が後退してしまう。
  • 会社更生法を使っても被災者救済が遅れることはない。国が立替払いをして後で東電から取ればよいだけ。むしろ政府案は債務整理機能がないので、賠償債務確定が遅れる。
  • 銀行の債権カットをすると金融不安を招くという批判があるが、その場合は金融安定化スキームを使えば良い。
  • 社債をとにかく保護するという思想は間違い。金融不安が具体的に出てきたら公的資金注入をすれば良いだけ。社債、銀行の保護に無関係の国民の税金を使うのは不当。
  • 東電を破綻させても電力供給には問題ない。破綻しても事業は継続できる。日本航空が事業を継続したのと同じ。
  • これからの原発は、「民間の損害賠償責任保険への加入」を義務付けるべき。
  • 原賠法からは「異常に巨大な天災地変による免責」を撤廃するべき。
  • 民間保険でも受け入れてもらえないようなリスクを原発は持っていると判断されるかもしれない。であるならば、それを国が税金で負担することになるが、それもおかしい。
  • 原発のリスクの分散が不可能なら、国も原発を行うべきではない。国益を損なうのが明らかだからだ。
  • 原発の是非を判定する際には、「民間損害賠償保険が成立するかどうか。」で判定するとよいだろう。