燃料プール 炉を優先、放置続ける

産経新聞 2011.4.9 08:36


 15日午前6時、4号機で爆発音とともに火の手があがり、建屋の壁が崩れた。4号機は震災当時、定期点検のため停止中で、原子炉内に燃料棒もなかった。安全と思われていた4号機の爆発は、「核燃料貯蔵プール」の存在をクローズアップさせた。


 「事故発生の初期段階から、米国から燃料プールは大丈夫なのかとの指摘があり、現場にもそう連絡していた」。原子力安全委員会の鈴木達治郎委員長代理は、こう明かす。


 プールには高熱を持つ使用済み核燃料が大量にある。その数は同原発全体で1万本超(1755トン)。防護壁は放射線を遮る水とコンクリートの建屋しかない。4号機には昨年11月の検査で原子炉から出したばかりの特に温度が高い燃料があることも、東電は分かっていた。


 だが、「水があるうちは大丈夫」と、1〜3号機の原子炉の冷却を優先し、何ら手を打たなかった。


 4号機では、燃料の熱でプールの水が蒸発して水面から露出、水素が発生し爆発したとみられている。燃料が一部溶融し、放射性物質が外部に直接漏出したとみる専門家もおり、原子炉の冷却よりもプールへの放水が、「今は最優先」(保安院)と、位置づけが逆転する。放水には自衛隊ヘリや消防車、東京消防庁ハイパーレスキュー隊の特殊車両などを総動員。放水中は、外部電源の復旧作業が中断された。


 「事故発生直後から気をつけていれば、もっと早く収束できたはずだ」。鈴木氏は、東電のプール放置が復旧を大きく遅らせたと指摘した。