電源喪失 安全とコストを天秤
2011.4.9 08:28 (2/2ページ)
平成21年6月に同原発の安全性について議論された経済産業省の審議会。委員の岡村行信産業技術総合研究所活断層・地震研究センター長は「約1100年前の貞観地震では内陸3〜4キロまで津波が押し寄せた」との最新の研究結果を受け、対策の必要性を強く訴えた。
だが、東電は「学術的な見解がまとまっていない」と応じなかった。岡村氏は「精度の高い推定が無理でも備えるべきだ」と食い下がったが、審議会も東電を支持した。
「過剰な安全性基準はコスト高につながり、結局、利用者の電気料金に跳ね返ってくる」
震災前に東電幹部がよく口にした言葉だ。
国の原子力安全委員会の設計指針も、「電源を喪失した場合、復旧を急げばいいという思想に基づいており、過大な防護への投資を求めてこなかった」(関係者)。
安全とコストを天秤(てんびん)にかけた結果、危機の連鎖が幕を開けた。